ゴールデンウィークが明けて、いわゆる五月病に陥り、出社に対して拒否反応を起こしてしまう人も多くいます。一生懸命に働いているのに評価されず仕事に不満がある人や、なぜか出世できないと感じている人は、「鈍感になる」力が足りていないのかもしれません。同僚や上司の言葉を敏感に気にしてしまう人が、スルースキルを身につけて能力を自由に発揮する方法を、心理カウンセラーである大嶋信頼氏が紹介します。
※本記事は、大嶋信頼:著『スルースキル -“あえて鈍感”になって人生をラクにする方法-』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。
敏感な人は堂々としているように見えない
カウンセリングの仕事をやっていて「あれ? なんでこの方は、こんなすごい能力を持っているのに出世しないの?」という疑問を持つことがあります。
頭も良くて、人に対して思いやりがあって、そして何より私がその方と話をしていて「楽しい!」と感じるから「この方はすごいな!」と思うんです。
でも、会社では「え? なんであなたがそんな役割をしているの?」とか「どうして、前の会社をそんな簡単に辞めちゃったの?」ということがよくありました。
そういった方々にお話を伺っていると「あ! 私と同じぐらい敏感だ!」ということがわかってきます。同僚や上司が言った何気ない一言が「引っ掛かっちゃってイヤな気持ちが抜けない!」となってしまうのです。
普通の人だったら「またおかしなことを言っているよ!」とスルーしちゃうところを敏感に反応してしまって「なんでそんなことをおっしゃるんですか?」と上司に言ってしまった、ということを聞いていて「ヒエ~!」と私はサスペンス映画を見ているような気分になります。
「そこで上司の言葉に反応しちゃダメだから!」という場面で見事に反応していて「あ~あ! 出世を逃しちゃった!」という結果になります。
敏感にいろんなことに反応するため、せっかくいい仕事をしているのに誰にも認められないという、不思議な現象も起きます。
イヤなことをスルーできちゃう人は堂々としているので、じつは大したことをやっていなくても他の人から認められます。
でも、敏感な人は、ちょっとしたことでも「はー!」とか「ヒィ~!」とか、いつもビクビクしていたり「イヤなことがまた起きるんじゃないか?」と緊張したりしているので「堂々としているような感じに見えない!」となります。
せっかくいい仕事をしているのに、敏感でいつも緊張しているので、堂々としている人と違って「仕事がちっとも認められない!」となり、出世できずに「え? 他の人とそんなに給料が違っていたんだ!」という大変なことになってしまいます。
ある人は、敏感に反応していても「ここで自分が反応しちゃダメ!」と我慢をするようにしていました。けれども、ようやく上司から認められて「あ! これから昇進するかも!」というところまで来ると、我慢して鬱積してしまった不満が「どーん!」と爆発してしまい「こんな会社なんて辞めてやる!」となってしまいました。
たしかに、ひどい上司でひどい会社なのかもしれません。でも、不思議なのは、辞めるタイミングです。もうすぐ出世という場面で「もうこれ以上はイヤ!」となってしまうんです。
それは、いくら我慢していても、やはり敏感に上司や同僚の不快な言動をキャッチしてしまって、それを他の人たちみたいにスルーできないから。
スルーできずに敏感に感じ取って、自分の中にそれが蓄積してしまうと「この会社はブラック企業」というように、どんどん会社の印象が悪くなってしまいます。上司のことが「最悪のパワハラ野郎」に見えてしまい「この人たちと一緒に働くのはイヤ!」となってしまうんです。
そして、会社を辞めてから「あれ? 私なんであんなことで会社を辞めちゃったんだろう?」と後悔の念が襲ってきます。「あんなことで辞めなきゃよかったのに!」と思うのですが、当時は敏感にいろんなことに反応し、そのストレスを吐き出さずにいたから、どんどんみんながイヤな人に思えてきて、会社も「最悪」になっていたから、続けるのが無理だったんです。
そんな方のお話を聞きながら「あ! 私も同じだった!」と振り返っていました。我慢して一生懸命に仕事をしていても、敏感にいろんなことに反応してしまうから、本当に上司などが極悪人に見えてきて「もう絶対にイヤ!」となっていました。
周りからは「出世頭!」とか「期待の星!」と言われたこともあったのですが、結局、いろんなことに敏感に反応するので「あいつはやっぱり出世できないかも」と言われているのが耳に入ってきます。
そして、我慢していろんな仕事をこなしていると、どんどんイヤな仕事ばっかり私に押し付けられてきます。
「これをこなせば出世できるかもしれない!」と初めのうちは頑張っているのですが「そんなイヤなことをやらなくても、仕事できないヤツが簡単に出世できているじゃない!」というのに敏感に反応して絶望的な気分になり、「う~! お腹が痛い!」と倒れてしまったこともありました。
何度か体の調子が悪くなって、倒れてしまって、周りからも「あの人は絶対に出世は無理!」と思われて、結局、それがイヤで「もう続けられない!」となっていたこともあったんです。
自分が思う「悪い人」キャラクターになってみる
当時の私は「この敏感な脳を外して洗いたい!」とバカなことを思ったこともありました。
他の人はちっとも反応しないのに、私はちょっとしたことでもすぐに敏感に反応しちゃって、周りの人の信用をぶち壊してしまったり、出世のタイミングを逃して「損をした!」と、またまたそこでも敏感に反応して脳にストレスを溜めて、さらに敏感に余計なことに反応する、という悪循環を繰り返していました。
そんな私の敏感さが、やがて鈍感になったときに、いろんなことから自由になります。
カウンセリングでも、あんなに敏感で「出世できない!」となっていたクライアントさんたちが、「え! そんなに鈍感になって大丈夫なの?」と私が心配になるぐらい鈍感になっていくことで、「やっぱり鈍感な方が出世できるんだ!」とびっくりするようなことが起こります。
敏感すぎて仕事が続けられなかった方が、鈍感になったら「え? そのままその会社を乗っ取るつもりじゃないでしょうね!」という感じに、会社のトップに駆け上がっていきます。
私は「敏感で繊細な方が出世する」と思い込んでいたのですが、「私が間違っていました!」という感じになっていったのでした。スルーできる人のほうが明らかに出世できるし、自分の能力を自由に発揮できて、人に余計なことを押し付けられて邪魔されることがなくなるんです。
「鈍感な人」は悪い人、という印象があったのですが、私は「敏感な人」でいい人を演じることで、「周りの人ばかり出世して悔しい!」といつも地団駄を踏んでいました。
悪夢から覚めて、いつの間にか「あ! ちょっと鈍感になっている!」と以前の私が「悪い人」と思うようなキャラクターになっているかもしれないのですが、私の目の前の道は拓けて、いつの間にかみんなが私を助けてくれるような、美味しい人生がそこにありました。「これが私の求めていたものかもしれない!」と最近では思えるようになっています。