無敵のスペインに施したイタリアの奇策とは?
……はい、すみません。ユーロについて書くと決めたものの、この試合に触れたすぎて話が横道に逸れたうえ、参勤交代くらい歩き進めてしまいました。全ての道はローマに通ずとはこのことですね(たぶん違う)。
ついでに、もう一本横の脇道に逸れますが、僕は2018年にバズったときに(「ワールドカップ ヘディング」で検索してみよう。嘘みたいな話だが、この検索ワードで最初に僕が出るぞ)レヴァークーゼン公式Twitter(現X)から「うちに来ないか?」と誘われたことがあります。
さて、話を本筋へ。2012年当時、スペインは世界最強。直近のユーロとワールドカップを圧倒的な力で制し、この大会もダントツで優勝候補筆頭でした。そのグループリーグ初戦がスペインvsイタリア。
この試合が僕がユーロのベストゲームです。
このときのスペイン代表は、バルセロナからメッシを除いたみたいな美しいポゼッションサッカーで、4年間どのチームにも止められることはありませんでした。
この試合のスタメンも当時無敵のバルサの中盤3枚(シャビ、イニエスタ、ブスケッツ)に、さらにレアル・マドリードの司令塔シャビ・アロンソ、マンチェスター・シティの至宝ダビド・シルバ、そしてワントップにはこちらもバルセロナの天才セスク・ファブレガスという、中盤から前にテクニシャンのMF6枚を並べるゼロトップという異常なまでの技術偏重布陣。
対するイタリアは、このときはうまくいっておらず、ワールドカップを制した一昔前よりかなり地味めなメンバー。スター選手も晩年のベテランが多く、前評判もかなり低め。
しかし、スペインの奇策に対し、イタリアも奇策を用意していました。
スペインに対して中盤での主導権を握ることを試合前から諦めたイタリアは、司令塔であるデ・ロッシを3バックの真ん中、最後尾に据えたのです。すると効果は抜群!
スペインのポゼッションに対し、3-5-2のイタリアはアンカーのピルロ以外めちゃくちゃ走れる中盤の選手たちが猛然とプレスをかけボールを奪うと、ピルロを中心にゲームメイク。
そして、スペインの最大の武器である即時奪回に対し、本来ならピルロと並んでいるはずのデ・ロッシがCBにいることにより、最後尾を使ってスペインの中盤プレスを空転させます。
今でこそ、ペップ・グアルディオラ監督がやりそうな戦術ですが、僕は雷に打たれたような衝撃を受けました。
イタリアは中盤を横幅ではなく後方に広げることでスペインのプレスを逃れ、スペインの守備ブロックの外側である最後尾から、さらにスペインの守備ブロックの両サイドの外側にウイングバックやフォワードを走らせると、デ・ロッシから精度の高いボールが次々に供給されます。
スペイン的には最悪持たせていいと思っている相手CBや、5レーンの一番外側に活路を見出したイタリア。革命的でした。
さらに、サイドの高い位置でボールを持つと、ゴール前になだれ込むセンターハーフたち。スペインの守備ブロックのあいだを経由することなく、戦術と運動量で多くのチャンスを作りました。守備に関してはカテナチオの国ですから、要所はやらせません。デ・ロッシも対人めちゃくちゃ強いのです。
そして、動画サイトで盛大にいじられるくらい大ブレーキのバロテッリを下げた直後の60分でした。
中盤で唯一、スペインの中盤並みに技術があるベテランのレジスタ、ピルロが相手の意表をついてドリブルで持ち上がります。虚を突かれたスペイン守備陣のあいだを鮮やかに抜け出したディナターレに絶妙のスルーパス!! ついにゴールを破りました!! ピルロのキャリア全部をフリにするような意外性と技術が詰まったスーパーゴールです!
その後、スペインが追いつき、一進一退の攻防の末、濃密な90分は引き分けで終わるのですが、イタリアの選手たちのセリエA仕込みの勝つためのしぶとさと戦術眼で、世界最高のポゼッションサッカーと渡り合う姿を見ることができたこの試合は、僕のユーロのベストゲームです。
ただ、イタリアがアンラッキーだったのは組み合わせでした。ここから波に乗って決勝まで駆け上がる前に立ちはだかったのは、イタリア戦の失点以降、全試合無失点で決勝まで勝ち上がったスペインでした。
そして、不運にも開幕戦で対スペイン用の策を見せてしまっていたイタリアは、スペインの前に0-4で沈むのでした。
「もし、決勝まであの戦術を見せてなかったなら……」そう思ってしまうような2012シーズンの終わりでした。