誤った問題に取り組んだ代償は大きい

問題設定がうまい──。それは、「欲しい結果を手に入れるために、より簡単な作業=問題を見つけ出す」ということだと言い換えることができます。

逆に、問題設定が下手というのは「欲しい結果を手に入れるために、回り道や複雑な作業=問題に取り組んでしまい、結果を逃したり多大なコストを支払ってしまう」と言えます。

学生時代ならば問題を時間内に解けなかった、試験に合格できなかったというレベルの損失ですみますが、ビジネスにおいては時間や機会の損失は非常にシビアな結果をもたらします。

問題を設定し、解決することで良い状態に持っていこうとしたのに、効果がなく損害が発生して、より悪い状況になってしまった。貴重な時間も資金も失った。誤った問題に取り組み、そして答えてしまうというのは非常に危険なことなのです。

ライバルに水をあけられて業績が低迷している企業が、大きな投資により社運をかけて新商品を開発。しかし、その新製品が鳴かず飛ばずで、一気に倒産の危機に陥ったという話は少なくありません。

「こういう製品を出すべきだ」という社長の設定した問題に、技術者のみなさんが懸命になって応えたにもかかわらず、そもそも実現させたところで売れそうもない製品だったというのでは笑い話にもなりません。指示された問題が誤っていたということです。

問題設定というのは、勉強においても、ビジネスの世界においても上流の作業です。スタートの間違いは、下流に行くに従って増幅され、全く違う到達点に至ってしまいます。

だからこそ、問題設定力というのはリーダーにとって必須の能力ですし、リーダーになる前からしっかりと鍛えていかなくてはいけないものなのです。

また、たとえ思うような結果を得られたとしても、「違うやり方はなかったのか?」という反省は非常に大切です。ライバルは、より簡単で効率的な方法を使い、達成しているかもしれないからです。常に反省し、常に考え、情報を集めることで問題設定力は磨かれていきます。