「役者をやっているんだな」という充実感がある
――ちなみに、市川さんは7月中旬まで舞台『放課後戦記2024』に出演。『ブラック・コメディ』の稽古をしながら、『放課後戦記2024』の本番に臨んでいた期間もあったそうですね。
市川:ありました。2つの作品が重なることが初めてだったので、とても不安でした。『放課後戦記』は、もう9年もやらせてもらっているので基本的には大丈夫だったんですけど、なかなか『ブラック・コメディ』の脳に切り替えられなくて。
最初は「台本を覚えるのは『放課後戦記』が終わってからでいいかな」と先延ばしにしていたんですよ。でも、本番が終わる前に『ブラック・コメディ』の稽古に入ることになって、「ヤバい! この量すぐに覚えられない」とすごく焦りました。
――そのピンチをどう乗り越えたんですか?
市川:大歳さんが「台本を読みながらでいいので、楽しくやりましょう」と言ってくださったんです。本当に救われました。「稽古場でやったことは全部忘れていいんで、(『放課後戦記』の)本番頑張ってください!」と言われ、それはそれでどうかと思ったんですけど(笑)。
――キャロルを演じるにあたって、大歳さんからはどんな指示がありましたか?
市川:台本のセリフには、昔の言葉や今では使わない言い回しがあって、言いづらい部分もあったんです。そこで大歳さんが「自分の言いやすい言葉に変えてもらって大丈夫です。ニュアンスが違いすぎたり『ここは変えずにいきたい』という部分があればお伝えしますけど、基本は言いやすいように変えて構わないので」と言ってくださいました。おかげで、キャロルが自分の中に馴染んできました。
――違和感なくキャロルを演じられるようになったわけですね。
市川:はい。しかも、皆さんがたくさん仕掛けてくるので、自分の動きもどんどん変わっていくんですけど、「私、今役者をやっているんだな」という充実感があって、とてもとても楽しいです。
――まさに演じる楽しさを実感している、と。
市川:『ブラック・コメディ』というステキな作品に出合い、役者の大先輩方と一緒にお芝居ができて、毎日が刺激的です。稽古場の段階ですでに面白いので、ぜひたくさんの方に劇場でこの作品の楽しさを体感してほしいです!
やりたいことをいつまでも続けていけたらいいな
――ところで、市川さんは現在、舞台作品に立て続けに出演しながら、レトロポップユニット・FANCYLABOのメンバーとしてステージにも立っています。多忙でありつつも、毎日が充実しているのではないですか?
市川:自分のやりたいことをたくさんやらせていただけて、とてもありがたいと思っています。AKB48時代と比べたらお仕事の量は減ったかもしれないけど、やりたいことを全部できていますから、毎日が本当に充実しています。今は「悔いのないように生きよう」「自分がやりたいことをとことんやろう」と心掛けています。
――では、市川さんが描く今後の展望は?
市川:もちろん、やりたいことはいっぱいあるんですけど、具体的な目標がないことが悩みで。「やりたいことをいつまでも続けていけたらいいな」というのが一番の夢です。例えば、舞台だったら「帝劇(帝国劇場)に立ちたい」、ドラマだったら「朝ドラに出たい」みたいな目標をみんな持っているじゃないですか。もちろん、私も出られたらうれしいけれど、それよりも今こうしてお仕事をいただけていることが本当にうれしいんです。
だから、「自分がやりたいことをずっと続けたい」という方向に夢が変わってきました。ビッグな夢じゃないかもしれないけど、応援してくださる方が1人でもいる限りは続けていきたいですね。
――いやいや、ステキな夢だと思います!
市川:……と言いつつ、FANCYLABOで世界進出したいという夢も持っています!
【原作】ピーター·シェーファー『ブラック·コメディ』
【上演台本・演出】大歳倫弘(ヨーロッパ企画)
【出演】浜中文一、市川美織、三倉佳奈、山口森広、朝海ひかる、渡辺いっけい ほか
〈公演期間〉2024年8月17日(土)~9月1日(日)
〈会場〉IMM THEATER
〈オフィシャルHP〉https://www.blackcomedy.jp
〇舞台「ブラックコメディ」 オフィシャルサイト