あんなに盛り上がってた会場が一気に「シーン」
――実際に『AGT』に出演したときの心境を、あらためて教えてください。
中村:司会のテリーさんが、僕らが登場する前に会場を盛り上げてくれてたんです。お客さんも、ずっと「フウー!」って盛り上がってて、そのままテリーさんに「いけいけ!」って煽られてステージに登場しました。
僕らもネタを披露する前のトークを頑張ってたんですよ。二人とも英語は話せないけど“一生懸命に喋る姿勢を見せよう”と決めていたんです。おかげで、お客さんとの距離を縮めた状態で、ネタをスタートできたと思っています。
五味:ただ、一発目に犬のネタを披露したとき、会場全体が「は? 何これ?」って、スベった空気になって、あんなに盛り上がってた会場が一気にシーンとなったんです。日本では鉄板だったネタなので、そこで心が折れそうになって。“でも、ここまで来たらスベっても堂々とやるしかない!”と頭を切り替えて、次のネタ、シマウマを披露したんです。
中村:出番前に舞台袖で「とりあえず最後までやりきって、悔いなく日本に帰ろう」って話し合ってたんです。でも、あの空気は怖かった。
五味:シマウマを披露したら、お客さんも段々とネタの方向性がわかってきたのか、笑い声が起こって、温かい空気が戻ってきて安心しました。
中村:でも、シマウマで空気を取り戻したけど、“あれ? 次のネタはユニコーンだよね!?”って気づいて。僕らが“これはウケない”と思ってたユニコーン。せっかく空気が温かくなったのに、またこれで冷えちゃうな……と思いながらユニコーンになって、ツノで風船を割った瞬間、会場から割れんばかりの歓声が起きたんです!
五味:最後まで折れずに「ユニコーンをやったほうがいい!」と言ってくれたスタッフの方に、“疑ってすみません!”って(笑)。
中村:その空気のまま、最後のキリンを披露したんですけど、僕が五味くんのお尻に顔を埋めた瞬間に、その日、一番のスタンディングオベーションが起きたんですよ。正直、“アメリカの人、意味わかんない!”って思いましたね(笑)。
コンビ結成して初舞台は『笑っていいとも!』
――お二人がお笑い芸人を目指そうと思ったきっかけを教えてください。
中村:小学生の頃に爆笑問題さんをテレビを見て、“こんな面白い人がいるんだ!”と思ったのが、お笑い芸人を志したきっかけです。中学生の頃に『M-1グランプリ』が始まったときは、“自分も漫才のチャンピオンになる!”と強く思っていました。
五味:僕も子どもの頃からお笑いが好きでした。ただ、お笑いよりも、高島彩さんや中野美奈子さんなど、フジテレビのアナウンサーさんにときめきを感じていたんですね。でも、フジテレビを見ていて『はねるのトびら』『めちゃ×2イケてるッ!』など、面白い番組を見るなかで、お笑いにのめり込んでいく自分に気づいたんです。
それからは「ルミネtheよしもと」など劇場に通うようになりました。そして、漫才を終えた芸人が「ありがとうございます!」と言ったあとに、舞台からスーッと薄暗いなかを帰っていく姿を見て、“これをやりたい!”と思ったのがきっかけですね。
――お二人はどのようなきっかけで出会ったのでしょうか?
五味:僕と中村くんはNSCの同期で、最初から仲良くて。お互い選抜クラスには入っていたんですが、そのなかでは落ちこぼれだったんです。教室のすみっこにいる感じの二人だったので、気が合ったんですよね。でも、当時はそれぞれ違うコンビを組んで活動していたんです。
中村:じつは、犬のネタは最初、前の相方と組んでいたときにやっていたものなんです。『笑っていいとも!』に「ウルトラソウル選手権」という、一発芸を見せるコーナーがありまして、そのオーディションで自信のあった「でんぐり返しをしながらチャーハンを食べる」というネタをやったら、全然ウケなくて。
五味:そのネタの話、初めて聞いた! 面白そうじゃん、今度やろうよ。
中村:(笑)。で、帰ろうと思ったら、審査員の方が小道具で持ってた犬のかぶりものを「それ何?」って。内心“めんどくさいな~”と思いながら渋々披露したら、めっちゃウケて、“それいいじゃん!”ってオーディションに受かりました。実際に放送でもウケて、そこから『いいとも』で毎週、いろいろな動物のネタをするようになったんです。
これは売れるチャンスだと思って「これからは二人で動物のネタを極めていかない?」と相方に提案したんです。そしたら相方が「ごめん、俺はそういう恥ずかしいことはできない」って(笑)。ほどなくして、方向性の違いで解散しました。
五味:ちょうどその頃、僕の相方も逃げるようにいなくなってしまったんです。僕は、前々から中村くんとコンビ組みたいと思ってたんで、“こんなぴったり重なるタイミングある?”となり、声をかけて、シューマッハが誕生しました。
中村:だから、結成して初めての舞台は、いきなり『笑っていいとも!』なんです。