打者・投手・一塁手と三刀流の可能性も?

では、この先には何があるでしょうか。来シーズンより二刀流復帰が見込まれる大谷選手ですが、今季の成績は打者に専念できたから出せたものか。当然ながら投手のリハビリをやりつつシーズンを過ごしているので、逆に肘が完治した状態で迎える来季は、打撃成績がさらに上に行く可能性もあるのか。

今季の打撃成績に、投手としてピークだった2022年相当の成績を加えて、現代MLB史上最高シーズンとされる、ベーブ・ルース選手の1923年(fWAR 14.7/ rWAR 14.1)を超えられるか。単純な足し算では超えられることになります。

どのみち予想を越えられるのであれば、さらに大胆な可能性を提示させてください。それはズバリ、打者、投手、そして「一塁手」の三刀流始動。

近年のMLBでは、指名打者は一人の選手で固定するのではなく、主力選手の「半休養」として、守備に就かせず試合に出すための「枠」として駆使されることが主流となっています。

大谷選手をチームに迎え入れる欠点があるとしたら、この「半休養」を使えなくなってしまうことが挙げられます(実際、エンゼルス退団時には、不幸中の幸いがあるとすれば、満身創痍のスーパースターであるマイク・トラウト選手の負担を軽減できる、との考えが多かった印象です)。

そして、今季のドジャースは怪我人にかなり苦しみました。投手はシーズン前の想定ローテーション投手がほとんど離脱。野手でもムーキー・ベッツ選手、マックス・マンシー選手、ミゲル・ロハス選手が一時期離脱したことは記憶に新しいでしょう。

明確な怪我離脱はなくとも、フレディー・フリーマン選手も(疲労があってか)後半戦は若干失速したり、と怪我防止が最大の課題といっても過言ではないでしょう。少なくとも野手側は、この「半休養」があれば多少なりの抑制につながると考えます。

そのなかで、究極のチームプレイヤーでもある大谷選手が、チームメイトへの「半休養」解禁のために、守備にも就き始める日が近いのでは、と予想します。

実際にシーズン前、ドジャースのロバーツ監督が、大谷選手の外野手起用の可能性を匂わせたこともあり、あくまでも今季は打者専念をしているからという大前提ではあるものの、多少なりと検討の俎上に上がっている話ではあるでしょう。

ではなぜ、ロバーツ監督が示唆し、かつNPBでもプレー経験のある外野ではなく、ファーストでの起用を予想するか。それは送球機会が多い外野より送球機会が稀なファーストのほうが、投手・大谷選手を守ることになるため。

前例として、もともと外野手であったブライス・ハーパー選手も、2022年オフに肘の手術(トミー・ジョン手術)を受けたあと、肘の保全およびリハビリ期間の短縮のため、2023年にはファーストへコンバートをされており、今もファースト専の野手として出場しています。

ファーストは投手・大谷選手にとって最も負担が軽い、理想の守備位置ではないでしょうか。そしてドジャースの編成上、ファーストのフリーマン選手も来年36歳であり、稼働の管理が必要となるキャリア晩年に差し掛かっています。フリーマン選手に「半休養」DH出場を与えた日には、大谷選手がファーストを守れば采配がカチッとハマります。

もちろん、指名打者と投手をバランスするだけでも人間離れの技であり、とんでもない負担である点を踏まえると、そこに守備を加えることはとてつもないことでしょう。

仮にファーストを守り始めたとしても、数試合に一度程度が限界ではないでしょうか。それでも、これまで「不可能を可能にする」を繰り返してきた大谷選手であれば、むしろ現実味がある次ステップかもしれません。期待が膨らみ続けてしまいますね。

どんな形にせよ、今後も歴史を塗り替え続けていくであろう大谷選手。まずはMLBキャリア初のプレーオフで、どれだけチームを引っ張っていけるかに注目していきましょう。