お笑いコンビ・ロッチのコカドケンタロウが、ミシンの腕前とセンスで話題を集めている。Instagramで自身の新作を投稿すれば、「素敵すぎる」「商品化希望」などと賛辞が続出。今回、ニュースクランチがコカドにインタビューを実施。ミシンの魅力などを聞いた。
友人からは「無茶苦茶やな!」
43歳から、趣味がミシンになったコカドケンタロウ。中古のミシンを購入してから、独学でその腕を磨いてきた。これまで数多くの作品を作ってきたコカドだが、その作り方を公開したり、人に教えたりしてきたことはない。
「僕の作り方は、学校に行ってる人からしたら多分間違ってます」
コカドが今までに作ったバッグ、洋服などを自前の古着に合わせて紹介する、芸人初のソーイングブック「コカドとミシン」(小社刊)は発売からわずか3日で増刷が決定。同著を作るにあたっては、洋服店で働くコカドの友人が、完成品を採寸して、型紙にするという通常とは逆の工程があった。
「僕がこれまでに作った作品を全部渡して、その長さを測って、型紙に落とし込んでもらいました。その型紙を使って一から作品を作って、本当に作れるか確認していて、その作業を見ていると勉強になることが多くて、逆に何度か僕が縫い方を教えてもらうこともありました。自分が作ったものの作り方を、改めて教えてもらう、という、なんとも不思議な体験でしたね(笑)。
洋服は、『CODE NAME』で働く友人に“これを、みんなが作れるようにパターンに起こして”とお願いしてやってもらいました。縫い方を見た友人からは“無茶苦茶やな!”と言われましたよ。たとえば、アロハシャツなんかは、“縫いしろが左右で違いすぎる! これでよく作れたな!”って(笑)。それくらい感覚的に作っていた洋服も、書籍ではきちんと均一に作りやすいよう、型紙に落とし込んでもらっています」
出版の声がかかったときの心境は「これまでなかったようなミシン本やし、面白そう」と前向きなものだった。
「今までのミシン本は、型紙がついていて、作り方がメインで紹介されているイメージなんですよね。出来上がりの写真はちょっとだけ、みたいな。でも僕の場合、自分が作り方をわかっていないから、作り方をメインで紹介するのは難しい。かつ、これまで作ってきた作品を紹介するだけなら、コカドだと弱いんじゃないかと懸念していたんです。
ですが、お話を詳しく聞いてみると、作り方も紹介しつつ、“初心者だけどこんなものができるよ”というメッセージも届けられるということで、僕が本を出す意義も感じられて、出してみたいと思いましたね」
“ここどうやんの?”と助けを求めながらインスタライブ
Instagramで新作を投稿すれば、「ほんとに凄いテクニック」「おしゃれ!可愛い!似合う」「ほんと器用ですね」などと称賛の声が続出。なかでも、主婦層からの人気が高まっている。
「Instagramでは、見ている方の属性がデータとして見れるのですが、ミシンを始めてから増えてきた印象がありますね。一番多いのは、僕と同世代から少し上の女性。続いて、30代の女性。割合でいうと、僕のインスタを見ている方の9割が女性。ミシンをやっている方が見てくれているんだろうな、と思っています。これまで、ミシンが好きな方たちが見ていた動画は、いろんな作品の作り方やコツなどが多かったと思うんです。そもそも動画をあげる人は、人に教えられるくらいの経験者が多いですし。
そんななか、僕は初心者で、ミシンのことをわからないままライブ配信していました。それが、見ている側からしたら、新鮮だったんじゃないかな。0から始めた何にもできないやつが、“ここって、どうやるんですか?”と視聴者に助けを求めているから、見ている方も“じゃあ教えてあげるよ”と集まってきてくれたんだ、と思いますね」
家にミシンがあるけどずっと使っていない、という状態の方は意外と多いのではないだろうか。今はわざわざミシンで作らずとも、洋服やバッグが比較的安価で手に入る時代。しかし、それでも心からミシンを楽しむ人がコカドをはじめとして存在する。
「コメントをくれる方々は、子育てが落ち着いて、自分の時間を持てるようになった方が多い印象です。子供のために、給食袋などをミシンで作ったことがあるけど、最近はそんなに触っていない、というお母さん世代が、僕の活動を見て、またミシンを始めようって再開してくれることもありますね」
最初からマニュアルに縛られすぎることなく、思うままに作品を作ってきたコカド。左右差があっても個性として可愛がり、とにかくミシンを動かすことを楽しむ。
「“ここはどうなってんねやろう?”となったら、あとから調べますけど、基本は全部なんとなくでやっています。やり方をガチガチに覚えてからじゃなくて、やってみて、できないところがあれば都度補う。その順番でやっていたから、ミシンを始めて以来、躓くことなくずっと楽しかったのかもしれないですね。
例えば、カバンは中に物が入ればいいし、持ちやすいように持ち手が付けられたらいいし、なんとなくでも全然使える。僕は、1950~60年代の古着の世界観が好きなんですけど、そのあたりの古着やアイテムって、いい意味でめっちゃ雑なんですよね。それこそ左右で長さが違うことも全然あるけど、むしろそっちの方が、僕は愛着が湧くんです。綺麗じゃなくてもいいっていう思いがあるから、型に縛られずにいっぱい作ることができました」
何を作ろうかアイデアを膨らませる時から、生地を買いに行く時、ミシンを動かしている時、出来上がって使ってみる時。色んな“楽しい”が続くのがミシンの魅力だが、なかでも一番楽しい瞬間は、「完成するちょい手前」だという。
「もうちょっとで完成する、って大体見えてきて、まだ襟が付いてないけど着てみちゃったりして、“うわ、もう可愛いやん”っていう瞬間がたまらない。もちろん完成して“うわー!嬉しい!”というのも嬉しいけど、そこに向かっているちょい手前が、ずっとドキドキしてて楽しいです」