私は平気だったけど、若葉くんが心霊体験を…
――ちなみに、撮影の時点では『嗤う蟲』というタイトルではなかったんですよね。
深川:そうなんです。撮っている段階では台本に『村八分(仮)』と書いてあって。「このタイトルは変わります」ということも伝えられていました。
――そしてスタッフやキャストの皆さんからタイトル案を募っていたとか。
深川:私たちも撮影の合間にみんなで「どういうタイトルがいいかな」と考えていました。まぁ私たちは雑談程度に「こんなのどうですか?」と好き勝手言っていただけですけど(笑)、そういった形でタイトルを決めるというのは初めての経験でしたね。そしてその後「『嗤う蟲』に決まった」と聞いたときはなるほどと思いました。“嗤う(わらう)”というワードでいえば、村人たちの何かを隠しているような笑顔がこの作品の象徴でもあるので。
――タイトル決めに関して皆さんと雑談したり、現場は和気あいあいとした雰囲気だったわけでしょうか。
深川:キャッキャとはしゃぐような感じではありませんが、皆さんとのコミュニケーションをしっかりと取りながら、丁寧に撮影に臨めた現場だったなと思います。
――共演者間の交流や、現場での裏話などはありますか?
深川:撮影場所が勝浦(千葉県)だったんです。勝浦はタンタンメンが有名なので、皆さんと食べに行きました。あと、そういえば若葉くんが心霊体験をしていました。幽霊を見たらしいです。
――心霊体験!? 詳しく聞かせてもらえますか?
深川:出演者やスタッフさんみんな同じホテルに泊まっていたんですけど、若葉くんが言うには、寝ていてふと目が覚めたら玄関ドアの鏡越しにおじさんが座っているのが見えたらしくて。「ヤバい」と思った若葉くんは誰にも言わずこっそりホテルを変えて、クランクアップ後に「実はこんなことがあって……」とみんなに告白していました。
――深川さんも同じホテルだったんですよね? 大丈夫だったんですか?
深川:はい、私は霊感がまったくないので。霊感がなくてよかった(笑)。
――では改めて、深川さんが思う『嗤う蟲』の楽しみ方や見どころを教えてください。
深川:この作品は、受け取る側の目線や角度によって全然印象が違ってくる映画だと思います。城定さんも、杏奈と輝道を「善良な夫婦という描き方はしたくない」とおっしゃっていて。物語の中には、村人からもらったカボチャを杏奈が捨てるシーンがあるんですけど、それを見て「捨てることないじゃん」と思う人も「しょうがないよね」と思う人もいるはず。そもそもこの夫婦が村に来なければ、村人たちは幸せに暮らせていたかもしれない。いろんなところに感情移入できる余白があるというのが、この映画の好きなところです。もちろん純粋に「何が隠されているんだろう? この後どうなるんだろう?」というゾワゾワ感を味わえるエンタメ作品なので、気軽に観に来ていただけたらうれしいなと思います。