急げ! 急げ急げ急げ!!

最速で頭を回せ。考えてから動くんじゃない。動きながら考えるんだ!

正直、腹は減ってない。昼は唐揚げガッツリいったし、間食もパックパク食べてたし。
でも、せっかく20時までは好きなもん食べれるんだから! 20時以降は食べれないんだから! 

苺まみれフルーツタルトは絶対全部食うっ!!

苺に、まみれてみせるっ!!!(賞味期限今日だし)

でも! 急いでるのを決して気取られてはいけない!

急いでいることがバレれば、あの女上司(嫌いな上司ランキング1位)から更に仕事を振られる可能性があるっ!!

いつも通り、涼しい顔で、でも手は最速で動かす!!

ぬぉうおりゃあああぁあああ!!

時刻は19時を回った!

私の会社から家までの最速のラップタイムは37分2秒。

まだ間に合う!! てか間に合わせる!! 必ず間に合わせ──

 

女上司「悪い、追加でこれもチャチャッと頼むわ」

 

……そして、時刻は19時29分。

仕事は終わった。

「お疲れー」

と、女上司(嫌いな上司ランキング殿堂入り)は帰っていく。

私は、自分のデスクで突っ伏した。

今帰ったところで、20時には間に合わない……。

私はもう、苺にまみれることは出来ない。

もう……諦めるしかない。

…………

私は、鞄をガッと掴み、エレベーターを待つ女上司にはバレないように、非常階段を駆け降りた!!

諦められない!

諦められるわけがない!!

せっかく食べられるフルーツタルトを!!

諦める私じゃないっ!!!!

私は会社を出ると、道路脇で高々と左手をあげる。

タクシーに乗れば! タクシーに乗れば、まだ希望は、ある!!

……この後の記憶は定かではない。

断片的に覚えているのは、帰宅直後の自宅の時計が19時57分だったこと、苺まみれのフルーツタルトをホールごと、なりふり構わずまるかじりしたこと、手や口、どころか全身を苺にまみれさせながら、20時1分にはぶっ倒れていたこと、だろうか。

 

これは、もはや事件だ。

翌日の体重は、

まあ、言うまでもない。