今オフ、千葉ロッテマリーンズからポスティングシステムでメジャー移籍を目指していた佐々木朗希選手。数多くの球団が獲得に乗り出しているという報道もあった中、新天地に選んだのは、昨年のワールドシリーズを制覇したロサンゼルス・ドジャースだった。
日本が誇るエース3人が同じチームへ!
日本時間1月18日朝、佐々木朗希選手が自身のインスタグラムにてロサンゼルス・ドジャースと契約に合意したことを発表。大谷翔平選手、山本由伸選手と合わせ、日本のエース3人が昨年のワールドシリーズ覇者に集うという夢の共演が実現。
その後、48時間もしないうちに、トップクローザーのタナー・スコット選手との4年7,200万ドルの大型契約が報道されました。
今オフシーズンは、既にサイヤング賞2度受賞経験あるブレイク・スネル選手と5年1億8,200万ドルの契約。昨年のNL(ナショナルリーグ)優勝シリーズMVPトミー・エドマン選手と5年7,400万ドルの契約延長、強打テオスカー・ヘルナンデス選手と3年6,600万ドルにて再契約。さらに、韓国からポスティングしたキム・ヘソン選手と最大5年2,250万ドルの契約……と数多くの大型補強をしており、SNS等では「またドジャースか!」という反応で溢れかえっています。
大谷選手を中心にドジャースを応援している方が大部分を占める日本では大変喜ばしいことではある一方、現地アメリカを中心とした一部メディアやファンがとある問題点を提起しています。
それはズバリ、「ドジャース一強になりすぎて戦力均衡が崩壊しているのでは」。
確かに、現時点でドジャースの25年総年俸見込*は約3億7,400万ドルとなり、2位のニューヨーク・メッツ(約3億300万ドル)やニューヨーク・ヤンキース(約2億9,800万ドル)と7,000万ドル以上差をつけて圧倒的最高額となっています。さらに、30球団の平均総年俸が1億6,400万ドルであり、ドジャースがその2倍以上、1チームだけ突出していることがお分かりでしょう。
しかし、これ自体は前例がないわけではありません。2023年にはメッツが総年俸3億7,500万ドル、と今年のドジャースの見込みとほぼ同等レベルを拠出している他、(時代が違えど)ヤンキースも2003年から11年間は30球団の平均総年俸の倍以上の年俸を払っていました。
しかし、2023年メッツの戦績は75勝87敗と負け越し。シーズン途中で解体を強いられました。ヤンキースも当該11年間で9回プレーオフには進出をしたものの、ワールドシリーズ制覇は松井秀喜選手がMVPに輝いた2009年のみ。他チームよりお金を払えば確実に制覇できる、というほど甘くありません。
大谷翔平、佐々木朗希という圧倒的アドバンテージ
しかし、ドジャースにはニューヨーク2球団と明確に違うものが二つあります。まずはスーパースター・大谷翔平選手の存在。前代未聞の年俸7,000万ドルの契約ながら、これもまた前代未聞の97%を10年後に後払いする仕組みを構築し、贅沢税上は(現在価値ベースの)年俸4,600万ドル程度にて計上されます。
フィールド上の戦力として打者のみでも割安、今年より投手としても復帰する点を考えると格安であると言えるでしょう(では具体的に何ドル程度が年俸として相応しいか、という議論は長くなるので一旦割愛)。
そして2024年にはチームにスポンサー資金として7,000万ドルを呼び込んだとされ(Forbes社調べ)、理論上は年俸を支払った後も2,400万ドルも得する計算。MLBの歴史上、一人で自身の年俸を広告収入で帳消しにし、更に利益をもたらす選手は恐らく他にいないでしょう。大谷選手の存在だけでも、他には真似できない圧倒的なアドバンテージです。
そしてもう一つは、格安の年俸ながら高い確率でエース級の成績を見込める佐々木朗希選手。
MLBの「25歳ルール」により、25歳未満かつ海外プロリーグで6年以上のプレー経験を有さない選手を国際アマチュア選手として扱われ、球団は自由に選べる一方、年俸が低額かつほぼ固定のマイナー契約のみ締結可能、かつ契約金にも上限(最大でも1,000万ドル前後)が課される条件下での契約となりました。
つまり、お金の条件は30球団ほぼ平等であり、属する都市の市場規模が小さい、比較的お金がないチームも勝機がある。その中で佐々木選手が選んだのは、最もお金を有するドジャース。