皆さん、“お笑い用語”をどれくらい知っていますか?
日常的に使われているので言えば、
“フリ“ “オチ“ “天丼“
この辺の言葉は耳にしたことがあると思います。
これ以外にも沢山お笑い用語はあるのですが、今回は、
「これをしてしまったら眠れないほど悔しい失敗」
を指すお笑い用語を紹介したいと思います。
本来なら思い出すのも文字にするのもとても嫌ですよ。
夜寝る前にその時の失敗を思い出したら、布団の中で体を捻らせすぎてそのまま千切れるんじゃないかというくらいの失敗。
じゃあなぜ書くのか?
それはみんなにこの苦悩を知って欲しい気持ちがあるから。
「こんな繊細でギリギリな状況で戦ってるんだ!」
「芸人て! すがちゃんてカッコいい!」
そう思って欲しいから。
もしかしたら「わかるなぁ」って思ってくれる人もいるかもしれないし。
今後俺がテレビやライブで困っていても寛容に見られるでしょ?
それじゃあ行きます。
“2択を外す“
言葉の通り、2つの選択肢の不正解を選ぶ行為のこと。
2択なら、正解を選ぶの簡単でしょ? と思うだろうけど、これがシンプルが故にめちゃくちゃ難しい。簡単だからこそミスった時の悔しさ後悔は物凄い。
くぅーー……失敗を想像するだけでゾッとするぜ。
優秀なMCの方というのは、ひな壇の芸人に質問や話題を振る時に、YESかNO、どちらかを言うだけでウケるような振り方をしてくれる。
もちろん2択のうち正解が1つしかないパターンもあるし、不正解を言っちゃっても笑いになるパターンもあるんだけど、厳密に言えば「正解」と「特に正解」に分かれていると俺は思っている。
この2択で「特に正解」を引き当てた時の快感はエグい。
サッカーでいうとこのゴール前に巧みに自分の足元にパスが来て、足を伸ばすだけでゴールになる。
ほとんど自分の力ではないが、パスをくれた人の意図を理解してお互いに意思疎通が取れたゴールはまた格別だし、特にパスをくれた人は「自分がアシストしました」なんて顔をせず、ゴールを決めた人が凄いんだと賞賛を独り占めさせてくれるあたりも痺れる。
ただ失敗した時は、パスをくれた人から、
「こいつ何してんだ?」
「お笑いIQ低いのか?」
と評価がうなぎ下がりする気がする。
たった2つの答えを外すからこそ、失態のリスクが高いということは理解して貰えただろうか。
さぁ、では実際、俺がこの2択をいつもどう外しているのか。その状況を詳しく説明しましょう。
とあるバラエティー番組の収録中。
芸人が5~6人ひな壇に座っていて、MCに指名された人はひな壇から立ち上がりスタジオの真ん中に移動する。
そこでMCや他の芸人から質問や無茶振りが息つく間もなく飛んでくる。
それに対してボケたり、ギャグをしたり、ツッコんだりとお笑い千本ノックを高速で受けるような状況だ。
何人もの芸人がチャレンジしては、ボロボロになってひな壇に帰ってくる。
「んじゃ次、誰か行けるやついるか?」
この地獄はまだ終わらないか……。
MCからの一言に、まだチャレンジしてない芸人は「次は自分が来るか」と身構える中、1人の芸人が手を挙げる。
「もちろん行かせてくださいよ!」
そう。この俺、すがちゃん最高No.1だ。
俺は仕事の時決めていることは、ビビらず逃げずにカマしに行く。
誰もが行きたくない戦地に自ら飛び込むのが、すがちゃん最高No.1なのだ。
ゆっくりとひな壇からスタジオの中心に向かい、
「さぁ、早くやらしてくださいよ!」
威勢よくMCにやる気を見せてるけど、本当はノープランで心臓がそのまま口から出て小旅行に行くくらい鼓動を鳴らしている。
「改めてだけど自己紹介してもらっていい?」
MCから1つ目のフリが来る。
ここでもたつくと一気にスベる空気感になるのでとにかく反射で返す。
「あー、名前ですか? 本名が面白人間て言います」
とにかくぶちかましてハードルを上げに上げて、自分を追い込むのがすがちゃん最高No.1式。
咄嗟に出る言葉は、とにかく強い言葉にする。
そこでMCから2つ目のフリが来る。
「どうする? ここでやめとくか?」
さぁ、来ましたよ。ここで2択の時間が。
ここでオレ以外の時間がスローモーションになる。
この2択はシンプルに“やる” “やらない”だ。
正解はいたって簡単。“やらない”を選択するだけだ。
MCはここまでやる気満々で面白人間を名乗る人間が、
「はい。やめときます」
と言う事で、いや実はビビってたんかいという笑いが起きることを想定するプラス、やらずして笑いを取れるという助け船を出してくれたのだ。
ただ絶対に“やらない”を選択した方が良いとわかっているが、ここで“やらない”を選ぶことによってその後展開されるだろう無茶振り千本ノックを見事に爆笑でやり切るという未来が無くなる。
MCがくれる甘いパスを受けるのか、茨の道を行くか。
すがちゃん最高No.1が出した答えは、
「もちろん やらせてくださいよ」
先ほど言ったマイルールをもう一度丁寧に言おう。
ビビらず逃げずにカマしに行く。
誰もが行きたくない戦地に自ら飛び込むのが、すがちゃん最高No.1なのだ。
もちろん結果は大惨敗。
せっかく無傷で帰れたにも関わらず、大怪我をして帰宅する。
自分でも何をしてるんだと思う。
布団の中でこの事を思い出し、体を捩らせる。
ただまた同じことをしてしまうのだろう。
なぜかというとこんな自分をカッコいいと思っているから。
参ったもんだぜ。
次回、反省第4回「『来ましたよ、伝説のプリンスが!』って思われたくない」は、5月20日(火)更新予定です。お楽しみに!!