お笑い芸人・カカロニのすがやが大学サッカーの魅力を発信する「カカロニ・すがやの大学サッカーReport」。第3回は、大学サッカーの名門・筑波大学蹴球部さんの練習にお邪魔しました。そこには、唯一無二の練習環境がありました。
筑波大学蹴球部は総勢200名超の大所帯
関東大学サッカーリーグ開幕を2週間後に控えた3月下旬。僕は茨城県つくば市へ降り立ちました。
つくばエクスプレスの快速車両は東京北部の北千住から千葉県を通過し、あっという間に学術都市として名高い街へ到着します。駅からタクシーで数分の道のりは、筑波大学で開催されたフェスティバルに出場した大学時代を思い出させます。
あの頃と同じ場所にあったグラウンドは、スライディングすると一発で大腿裏の皮膚が全部持っていかれる当時のような掠れた人工芝ではなく、三笘薫選手らOB達の支援もあって完成した美しい人工芝でした。
あ! よく見たら当時は土だった隣のグラウンドも綺麗な人工芝になってる!!
余談ですが、この土のグラウンドは、僕が開始1分でイエローカードをもらい、ケガ人事情でほぼベンチがいなかったため、その日開催予定の2試合(残り179分)を僕が退場して10人で戦うのが嫌すぎたキャプテンが、右サイドハーフの僕の周りの守備を固めるという将棋の穴熊囲いみたいな布陣を敷いた思い出のグラウンドです。
さて話を戻しまして、昨年は明治大学が史上初の無敗優勝を成し遂げた関東大学リーグ。筑波大学は、その明治に次ぐ2位でフィニッシュすると、負けたら4年生が引退する最後の大会・インカレ(全日本大学サッカー選手権大会)でも明治にPKの末に敗北。
その一方で、茨城県王者として出場した天皇杯では、明治大学を破ると、当時J1首位のFC町田ゼルビアを倒すというジャイアントキリングを成し遂げました。明治と並び大学サッカー界の二大名門と呼べる強豪チームです。
昨年はこの直接対決2試合と天皇杯のゼルビア戦を生観戦することができたのですが、どれもアマチュアレベルからかけ離れた名試合でした。
そしてチーム運営の面でも、この国立大学の蹴球部には唯一無二の特殊な環境がありました。
グラウンドに到着すると、副務の大和田さん(新3年)が案内をしてくれます。筑波大学は、スポーツ推薦の部員が各学年5~6人で、総勢200人ほど在籍しているのだそう。スポーツ・健康について学ぶ、体育専門学群以外の学群の部員も多いのだとか。

その中にはプレーヤーだけではなく、コーチングスタッフなど、裏方を務める部員や大学院生も多くいるため、実際のプレーヤーは160人ほど。
1〜6軍まである蹴球部はグラウンドを時間ごとに区切って練習しており、僕が見学させていただいたのは1軍の練習。
練習メニューがプリントで配られる!
グラウンドに入ってまず驚いたのが、その日の練習メニューが分単位で記載されたプリントが配布されたこと。戦術練習やミニゲームのチーム分けまで詳細に記載してあり、全体で共有できるようになっています。僕の周りにいた複数人の関係者にも配られていたのですが、大和田さんによると、その方々はスカウトの方なんだそう。練習にもスカウトが……!!
確かに、練習メニューを多くのスタッフが共有して効率化できることに加え、ミニゲームなどを見ていても、どのプレーヤーが誰なのかも選手のコーチングの声と照らし合わせて確認がしやすいです。

小井土正亮監督と挨拶をすると、とても気さくで穏やかな雰囲気でお話ししてくださりました。話題はやっぱり大学サッカーの注目度の低さについて。大和田さんもそうでしたが、みんな高い競技レベルに釣り合わない注目度の低さについて悩み、盛り上げようと試行錯誤しています。
小井土監督は僕だけでなく、選手や運営含む多くの部員と和やかに、かつテンポ良くお話をしている姿が印象的でした。
驚くことにこの名門チーム、小井土監督以外の全てのスタッフを学生で分担しているのです。また、スポーツ推薦だろうが、エースだろうが、学年が上がろうが、局と呼ばれる14からなる役職からの免除はなく、全員が責任を持って部のために働きます。さすが一流国立大学というべきか、メディカルスタッフまで学生・大学院生。
これも余談ですが、部員が運営する筑波大学サッカー部の公式YouTubeは、編集レベル一つとっても、卒業後すぐにその世界でフリーランスで食べていけるレベル。
企画力もありますし、チームに興味を持ってもらうためのバラエティ動画を見ても、そもそも部員の地頭がいいためか、安易にギャグをするようなこともなく、「お笑いの基本は会話である」ということを感覚的に押さえているため、とても面白いです。テロップも上手。
さて、他にもゼルビア撃破に貢献した分析局や審判局、スポンサー局や会計局など、全員が知性と責任感を持って仕事をする様は学生とは思えません。というか、彼らはこの環境下で既に自立しており「学生だから」という甘えがないのです。
そこにはあるのは『大学サッカーを牽引する』という筑波大学蹴球部のテーマに向き合う覚悟でした。
実際に、関東リーグでは近年、『ホームゲーム』という、ホームチームが運営する方式を取る試合が多いのですが、筑波大学は運営にもかなり力を入れ、また多くの部員が近隣の少年団のコーチとして提携しているため、地域とも密接になり、昨年は全大学で最多動員を記録したそうです。決して駅近とは言えない立地でこれはすごいです。
個人的な感想ですが、エース格の選手が「大学サッカーを牽引する」という覚悟を持つことと、部員200人からなるチーム全員がこの覚悟を持つことは大きく違うと思っていて、後者をできるチームなんていうのは他に類を見ないのではないでしょうか。