お笑い芸人・カカロニのすがやが大学サッカーの魅力を発信する「カカロニ・すがやの大学サッカーReport」。第2回は今シーズンの関東大学サッカーリーグ戦、22戦無敗優勝を成し遂げた明治大学体育会サッカー部さんの練習見学に。オフ明けの練習日だったのだが、あまりにレベルの高さに驚きの連続だった。

明治大学サッカー部の朝は早い

始発では練習開始に間に合わず、早朝からタクシーに乗り込み、明治大学八幡山グラウンドに到着したのは、秋も深まり、まだ陽も昇っていない5:45でした。

先方から伝えられた練習開始時間より30分早いにも関わらず、マネージャーの山田君が入り口に立ち迎えてくれています。こんなに朝早いのに……何分前から立ってくれているのよ……。

というわけで、過去には長友佑都選手ら多くのプロ選手を輩出、そして今年の関東大学サッカーリーグ1部で史上初の無敗優勝を成し遂げた、名門・明治大学体育会サッカー部の練習を一部体験と見学させていただきました。

グラウンドに向かうと、練習開始まであと30分あるにも関わらず、1年生の部員達がグラウンドに小石は落ちてないか、ゴールネットに綻びはないかなど、懐中電灯を使って細かく確認しています。これも毎日の練習前のルーティーンなのだそう。

明治大学といえば、そのほとんどの選手が超名門チームの出身であり、各学年の1/3、多い学年は2/3がプロになるようなチームですが、こういった仕事を怠る選手はいないのだそう。

無敗優勝を成し遂げる隙のなさはこういう面から生まれてくるのか。「その辺はこの後のインタビューで深掘りしていこう」と胸に決めて、お借りした明治のウェアに着替えてグラウンドに入ると、次々と部員達がこちらに近づき挨拶をしてくれます。

姿勢は正しく、声は低く。礼節を重んじる明治大の静かな迫力を早々に目の当たりにし、その圧に尻込みして、

「へへっ! おざますっ! 朝早いっすね、アニキっ!」

と揉み手しながらへりくだりそうになる自分を必死で抑えて、こちらも低い声で挨拶をします。

ウェアもある程度自由なようで、出身チームのウェアを着ている選手も多いのですが、練習着でこちらが圧倒されるこの感じ、懐かしいです。強豪大学と練習試合する時あるあるなのですが、アップ中のウェアで出身チームがわかり、それだけで無名校の我々は畏怖したものです。ものの数分の間に次々と挨拶に来るJ下部チームや青森山田、前橋育英らのウェアを着た選手たち。エグいて。

▲まだ薄暗い中、練習前に各自で体を動かす選手たち

さて、この日はリーグ戦後の3日間のオフ明けの練習ということで、調整の要素も含むA.Bチーム合同の全体練習(お気づきですか? 学生サッカーの強豪でA.Bの2チームしか抱えていないのは、非常に珍しいのです。それほど明治大学は狭き門であり、少数精鋭)。

栗田大輔監督から檄が飛ぶ

練習前にグラウンド中央に集合すると、軽く栗田大輔監督から紹介いただき、その後、軽いミーティング。栗田監督は、口調は穏やかですが、静かな圧があります。その内容を一部ご紹介。

栗田監督「関東リーグ優勝おめでとう」

(すがや心の声)「あ、“おめでとう”なんだ。自分ではなく選手が出した結果と捉えているんだ」

栗田監督「関東で優勝したという余韻に甘んじていると、足元がすくわれる。早くインカレモードに切り替えて、熱量と質の高い練習をしなければいけないな」

……真の王者、常勝チームの志を感じる短いミーティングが終わると、選手たちはピッチに散り、アップが始まります。

アップは、柔軟を取り入れつつステップワーク中心。選手たちが、僕がメニューについていけなくならないよう、列の真ん中に入れてくれます。

以前、練習参加した母校の獨協大学では多少感じたのですが、彼らには

「なんかよくわからない人が来てるな」

という警戒心も、

「芸人をやっているらしいぞ」

という変な好奇心も感じません。なんていうか、精神年齢や自立している感じが大学生離れしています。

僕は今年で33歳。ステップや腰を落としての移動など、フィットネス系のトレーニングでもう太ももパンパンです。補助倒立や倒立での腕立ては、みんなにとってはアップかもしれないですが、僕にはオーバーワークです。体感ですが、倒立腕立ては、プレステの○ボタンの可動域くらいしか上下動してなかった気がします。

▲ウォーミングアップで太ももがパンパンに。写真中央の灰色のジャージがすがや

ここまでの時間で思ったのですが、二人組のメニューになると、4年生の選手が僕のところにスッと来て、当たり前のようにペアを組んでくれたりと、今やるべきことを考えて動けるし、それを周りも当たり前と捉えているので、茶化す雰囲気もありません。

学生時代にあった「誰がいく?」みたいな探り合いも「いつもやっているやつとペアでやるから」みたいな感じもない。

僕がいることを特別なものと捉えていないのです。すごく地に足がついた雰囲気があり、多分、彼が来なくても他の選手が当たり前にペアを組んでくれただろうと容易に想像がつきました。

▲倒立も軽々こなす選手たち。中央奥のすがやはなんとか耐える

『絶対王者の風格あり』というのがこのチームの第一印象でしたが、中に入ることで「マネージャー含めて、主体的に考えて動ける人ばかり」という、その強さを生む芯のようなものが見えてきました。

GK陣はGK用の練習をしています。コーチは 横浜F・マリノスをはじめ、長らくJリーグの舞台でプレーしていた榎本達也さん。元プロに教われる環境があるなんて、幸せなことですね。

▲GK練習。こちらもレベルが高い