大学サッカーの魅力を知ってほしい!
8月の半ば。十数年ぶりに母校、獨協大学に足を踏み入れました。
東武スカイツリーラインの電車に揺られ『松原団地』という、限りなくバス停みたいな駅名から、最近変更された『獨協大学前』という駅を降りて、5分ほど歩くと校門があります。校門をくぐり、左手にある人工芝3面のグラウンドをぐるっとまわると入り口が。
この徒歩10分の距離を、何度2~3分で激走したことか……。遅刻は、連帯責任の罰走が科されるのです。
というわけで、今回から始まる大学サッカー部の練習を見学させてもらい、その様子とキャプテンに取材をするというこの連載。第1回は、僕も所属した獨協大学體育会サッカー部に行ってまいりました。
この連載を始めるきっかけとして、僕のコラムを1年半以上担当してくれた編集の方が『大学サッカーはレベルが高いのに、注目度と比例していない気がします』『海外クラブは、優秀な日本の大学サッカー部員を、移籍金なしで引き抜くことがありますよね。それほど良い選手がいるのに、観客動員は伸びていないんでしょうか?』……そんな現状の大学サッカーを盛り上げていきたい、と提案してくれたのがはじまり。
実際問題として、大学サッカーは、トップクラスでプレーする多くの選手にとって、プロを目指すための通過点であり、4年しか属さないリーグの観客動員や注目度に粉骨砕身するのは、メリットが少ないという事実があります。
そしてリーグ戦が軸となるスケジューリングは、より多くの選手をスカウトに見てもらう、という就活の面ではメリットしかありません。しかし、高校サッカー選手権のようなトーナメントによるドラマ性を好む一般層には刺さりづらくもあり、レベルの高さと注目度が乖離し続けています。
さらに、10年前までは関東一部リーグでは、ほとんどの試合がそうであったスタジアムでの開催は少なくなり、仮設スタンドしかないような大学のグラウンドで行われることが主になりました。
これは実にもったいない。大学サッカーのトップといえば、今年でいえば筑波大学が天皇杯でFC町田ゼルビアを倒したように、毎年のようにJリーグチームを撃破するなど、プロに匹敵する実力があります。
2022カタールW杯での活躍が記憶に新しい伊東純也選手に三笘薫選手、守田英正選手らも大学サッカー出身者。多くの人材を輩出しています。
この夏にも慶應大学の2年生、塩貝健人選手がオランダ1部のNECに移籍するなど、移籍市場という観点で見ても、世界的に大注目のリーグなのです。
というわけで、末端とはいえ大学サッカーをプレーしてきた者として、大学サッカーを盛り上げるべく連載させていただきますので、よろしくお願いします。
すがやの母校・獨協大学サッカー部へ!
さぁ、第1回は我が母校の獨協大学。スタメンの多くの選手が、大学卒業後にJリーガーになるような関東一部リーグ、主力級がJリーガーになることが多い関東二部。Jリーグ入りを狙える選手も多くいる関東3部の下。関東4部ノルテというリーグに属しているチームです。
平均すると年にリーグから数人、J3やJFLにいき、さらに上のカテゴリーにいく選手もたまにいる、というような感じ。僕の世代だと、当時同カテゴリーだった東京国際大学出身で、湘南ベルマーレのGK・富居大樹選手が今もJ1でプレーしています。
ということでトップ・オブ・トップではありませんが、ここにも熱い戦いはあります。
獨協大学といえば、経済学部は偏差値52〜54くらい(僕が在学していたときは)。外国語学部は58〜62くらい(これも当時)という、偏差値にばらつきがある学校(経済学部の僕たちは「偏差値57くらいだよ」と勝手に平均化して外で喋っていた)でした。
サッカー推薦というものは存在せず(勉学以外で特別なにか(サッカー含む)を頑張った人、というような推薦枠は2つあった)、勉強をしっかりやりつつ、サッカーも続けたいという40〜50人の少数の選手達で、部員400人という東京国際大(現関東一部リーグ)や選手を集めまくっている、同じリーグの学校と鎬を削っていました。それはそれは、熱く燃えるものがあります。
勉強を頑張りつつ、サッカーももっとやりたいと思っている偏差値50〜60くらいの高校3年生に、興味を持って志望校のひとつに加えてもらえたら幸いです。
さて、そんな母校のサッカー部は今どうなっているのか、とグラウンドに向かうと、キャプテンの熊澤青波(くまざわ せな)君が案内をしてくれます。
大人にも物怖じせず、丁寧に伝えるべきことは伝える。……なんてできた子なんだ。就活、上手くいってほしい。ちゃんとこういう子を評価してくれよ、全人事部さん。
獨協大のグラウンドは、人工芝3面を他の部活と分け合って使います。この日は夏休みということで、午前中にフルコート一面を使用。都内から10分かそこらでこの環境は素晴らしいです。
チームを指揮する川上監督に話を聞くと、この日は、獨協サッカー部の特色である、『まとまった夏休み明け』ということで、少しずつ負荷をかけて最後にダッシュをするということ。
この素晴らしい環境でボールを蹴りたい僕は、当たり前のように練習着を用意して、愛用のミズノのモレリアを履いてスタンバイすることで、トップチームのウォーミングアップと最後の走り込みだけ参加させてもらえることに。いや、監督。走り込みは頼んでないんですが……。
サテライト組(Bチーム)にも別のコーチがつき、それぞれで練習しているという、僕の時よりも整った環境で、しっかりと自分たちを追い込んでいるメンバーに混ざると、選手たちは温かく迎えてくれます。
「トークサバイバー! 見ました!」
「チャンスの時間、見ました!!」
「全力!脱力タイムズ、見てます!!」
「……それ、全部相方がピンで出たやつじゃねぇか!!」とツッコむと、ケラケラと笑う後輩たち。この緩めの上下関係も獨協っぽい。懐かしいです。