“いい俳優さんだね”と言ってもらえることが目標

――経験を積まれても日本語に対して真摯に向き合っていらっしゃるんですね。日本語勉強も継続されているのでしょうか?

知英:机に向かって勉強するみたいな、しっかりした勉強はしていないのですが、日常的に分からない言葉があったらスマホで調べたりします。この言葉を韓国語で言ったらどういうふうになるのかとか、逆に韓国語でこういう表現は、日本語だとなんていうのかとか。そんな感じで言葉を覚えています。

――なるほど、そうやって語彙力を高めていらっしゃるんですね。では、俳優としてこんな俳優になりたい、賞を獲りたいなど、目標はありますか?

知英:“いい俳優さんだね”って言われたいです。それが一番の目標ですね。まだ、グループとしてのイメージが強い方も多いと思うので、歌手としてだけじゃなく、いい俳優さんだねと多くの方に知ってもらえたら最高ですね。

 

――知英さんは今、日本と韓国を行き来される生活をおくっていらっしゃいますが、2拠点で生活する上で大変なことや、逆にいいなと思うところなどはありますか?

知英:大変なのは、荷造りです(笑)。1週間以上の滞在もあるので、例えば日本と韓国の気温差があるときは、韓国ではこれくらい着ていたら暖かくてちょうどよくても、日本に来たらそれじゃ暑すぎるとか。服のことを考えたりするのが大変です。

逆にいいことは、日本に来るとリフレッシュできて気分転換になるというのはあります。韓国と日本を行き来していると、周りの人から羨ましがられるんですが、移動は大変です(笑)。韓国は、まだ近い方だとは思いますが、瞬間移動できたらいいなって思います(笑)。

――30代になられて、改めて日本でも仕事を頑張っていこうとされている今、仕事とプライベートのバランス、心のバランスをどうやって保ちながら仕事をされているのかが気になりました。知英さんが心がけていることなどはありますか?

知英:昔は、仕事とプライベートを分けたいって思っていたんです。でも、最近は仕事だけど、素の自分のままでいたいなって思うようになりました。以前は、いっぱいいっぱいだったので、自分のことを考える時間がなかったのですが、30代になってから思うのは、大変な20代を乗り越えたから、今こんなふうに考えられるようになったのかもしれません。

昔は仕事を頑張りすぎたり、無理したり、大丈夫じゃないのに大丈夫っていう人だったんですよ。絶対成功させないとだめ! と思って。でも今は、もちろん成功も大事だし、上手くいくことも大事ですけど、考え方をちょっと変えて、楽しくやればいいんじゃないかなって、思うようになりました。私が楽しければ、周りのみんなも楽しくなれるんじゃないかなと、思ったり。そうなったらいいなっていう希望でもあるのですが、そう思いながら、いつも仕事をしています。

 

――なるほど。肩の力がいい感じに抜けるようになったということですね。知英さんのInstagramも拝見させていただきましたが、笑顔がいっぱいで元気な様子が伝わってきました。エネルギーの源はどこにあるのでしょう?

知英:昔は、不安があっても“やるしかない!”っていう気持ちでいたのですが、でも今は、不安が少しあったとしても、エイッ! と、やってみたら、あれ? 意外と大丈夫だった! っていうのを何回も経験して、そんなに怖がらなくてもいいんだと気づきました。不安を感じることや怖がることは、悪いことじゃないと思うんです。

そして、人ってネガティブに考えることがありますよね。そういうのは、人間の本能でもあると思うので、それを無視したら自分に嘘をつくことになると思います。ちゃんと自分と向き合って、今はちょっとだけ不安だけど、“うん、うん、よし、じゃあ頑張ってみよう!”みたいな感じで、受け止めています。原動力になっているのかわからないですが、ちゃんと弱い部分を感じて、それを周りの人に言えるようになったと思います。

それが私にとっては、いい方法だったと思います。昔は、“大丈夫です、私は大丈夫です”って、嘘をついていたのですが、不安な時は、その気持ちを周囲の人に正直に伝える。自分の心の声を聞いて、気持ちを大事にする。そうすることで、心が軽くなれたんだと思います。

――では、最後に、知英さんは芸能の仕事を通じて日本でも活動をされるようになって、仕事をきっかけに日本にご縁が生まれたと思うのですが、知英さんにとって日本はどんな国だと感じますか?

知英:帰ってこれる場所があるってことは、安心しますよね。旅行で行く国とは違って、日本には友達がいたり、スタッフの皆さんがいて、ファンの皆さんがいて、久しぶりに会うと、“おかえり”って言ってくれるから、それがすごくほっとします。温かい気持ちになります。

以前は、日本って私にとってどういう国なんだろうと考えたことがありました。でも今は、日本の文化もたくさん韓国に入ってきているし、韓国の文化も日本にたくさん入ってきていて、お互いの国が好きだという若い人たちもいっぱいいます。そういう人が増えている状況は、私にとってもすごく嬉しいことですね。

プロフィール
 
知英(ジヨン)
1994年1月18日生まれ。韓国出身。2007年、韓国にてKARAのメンバーとしてデビュー。2014年、日本で俳優としての活動をスタート。ドラマ『地獄先生ぬ~べ~』『ヒガンバナ~警視庁捜査七課』『オーファン・ブラック ~七つの遺伝子~』『連続ドラマW そして、生きる』、映画『暗殺教室 卒業編』『片想いスパイラル』、ミュージカル『スウィート・チャリティ』などに出演。
Instagram :@kkangjji_