お笑い芸人・カカロニのすがやが大学サッカーの魅力を発信する「カカロニ・すがやの大学サッカーReport」。第5回は日本大学サッカー部さんへ。全練習に参加させていただき、すがやが体感した強さの理由とは?

▲東京都稲城市にある練習場

スカウト泣かせの魅惑のポゼッションサッカー

大学サッカーに触れる機会が増え、関係者の方とこのコラムの話をすることも増えました。そんな中、Jリーグクラブのスカウト、そして大学サッカープレーヤー達、複数人から「あそこは面白い」と名前が挙がる大学がありました。

実際にスタジアムへ足を運ぶと、ピッチ上で繰り広げられるサッカーは、3-4-3を軸としつつも、立ち位置は流動的。「誰のホームポジションがどこかなかなか掴めないから、スカウト泣かせなんだよね」と、俯瞰で見る者すら幻惑する魅惑のポゼッション。

ピッチ上に無数に作られた小さなトライアングルが歯車のように右回り、左回りと回る様は、J1を制したポステゴグルー監督率いる横浜F・マリノスのようにも見えるし、イングランドの名門・アーセナルのデクラン・ライス×ルイス・スケリー×マルティネッリのトリオも連想させます。

そして、そのスタイルをどんなチーム相手でも変えることはなく、貫いていく。そんな日本大学サッカー部のフットボールがどんな風に作られるのか知るべく、その練習に参加させていただきました。

朝5:45にグラウンドに着くと、既に寮からグラウンドまでの道を選手達が掃き掃除をしています。

まずは、監督の川津博一さんにご挨拶。あの流動的なポゼッションサッカーはどんな練習で作られているのか聞こうかと思いきや、「今日は選手がメニューを組む日ですね」という返答が。

選手がメニューを組む?

過去に筑波大学の練習を見学させていただいた時に、学生にコーチを任せて、学生主体で練習も試合のベンチワークも進めていると聞きましたが、それに近い形でプレーヤー内で割り振られている『トレーニング班』がメニューを組み、スタッフ陣のアドバイスを受け、練習を仕切るのだとか。

僕が参加したこの日も、キャプテンの植木颯選手ではなく、トレーニング班の田中慶汰選手がプレーしながらメニューを説明していました。このように日大の特色として、全ての部員に班活動が割り当てられ、それは学年が上だろうと、プロ内定選手だろうと免除されることはないのだそう。

驚くべきことに早朝からの清掃も、下級生だけがやるわけではなく学年関係なくやっています。

高知ユナイテッドSC内定の4年生・松本大地選手はレギュラーながらも総務として、試合開催に必要な書類の用意など、かなり重要かつ、言い方は悪いですが面倒臭い仕事を今も担当しているのだとか(すがやも大学時代にやったことある。ミスると失格扱いになるので精神的なストレスもある)。

それは川津監督の

「サッカー選手にならなかったとしても、社会で生きていけるよう。またサッカー選手になったとしても、引退してからもサッカーの世界で長く生きていけるよう、人としての部分を磨かないといけない」

という考え方があってのことだそう。

▲グラウンドや備品も練習前にキレイになっている

これがサッカーには関係ないのかというと、決してそうではなくて、関東2部と東京1部リーグ(当時の3部相当)を行き来していたチームは、川津監督が就任以降(ご本人曰く戦術的なことはスタッフに任せてあまり言わないことが多いそうですが)、関東1部に昇格し、3シーズン連続で1部で戦っています。

今季の関東リーグを見ても、川津監督が、ピッチ外の部分で「うちよりしっかりしているよね。うちももっとやらないといけないよね」と選手に伝えているという日本体育大学(通称:日体大)は昇格組ながら関東1部リーグ前期を終えて、3位につけています。

さて、ここで気付いたのですが、このチームにはマネージャーがいません。

川津監督にお聞きすると「マネージャーがいると選手が雑務を楽できてしまう」との考えから、選手各々に責任を持って仕事をさせるため、あえてマネージャーを受け入れていないのだそう。なるほど、サッカーだけやっていてもダメな環境なんですね。

日大サッカーの根幹は「走りきる」こと

さあ、練習が始まります。あの美しいパスサッカーはどんな練習から生み出されるのか、僕も参加させていただきました。そして、そこから僕が体感したのは……

ハードワーク! トランジション!! インテンシティ!!!

きっっっっつい!!!!!

とんでもなく集中力と強度が高いハードトレーニングでした。

選手たちに聞くと「いつもと同じかちょいキツイくらい」だそうで、川津監督によると
「うちのパスサッカーをどのチーム相手にも貫くために、どこよりも走れるチームでないといけない。相手が足を攣って次々に倒れていくような試合でも、うちは走りきれるんです」。

確かに一時期のバルセロナのように、パスを回すチームが、上手いからと言ってハードワークを怠りだすと、途端に脆く崩れていくケースはサッカーではよく見る現象ですが、ポゼッションを重視しているからこそ、スタミナを磨き上げていくんですね。

そういえば、過去にコンサドーレの選手とお話しした際に「ミハイロビッチ監督が来た時、『練習ではどんな戦術的な細かい指示をするんだろう』と身構えていたら、とにかくひたすらハードワークを要求されて驚いた」と聞いたことがありました。サッカーって奥が深いなぁ。

川津監督が教えてくれたのですが、日本大学出身で現浦和レッズの金子拓郎選手も、運動量や試合終盤になってもキレが落ちない要因について「日大の練習がきつかったのが活きています」と、度々メディアに発信しているのだとか。

また、金子選手といえばドリブラーでありながら、上半身も筋骨隆々で、空中戦も強いという珍しい選手なのですが、それも日大時代に復帰まで時間を要する怪我をした際に川津監督の助言で磨き上げたものなのだそう。

余談ですが、金子選手は人懐っこい性格で「たまには褒めてくださいよー!」と川津監督に冗談を言ったりすることも多かったらしいです。規律とそういう人間性、どちらも大事なんだろうなぁ。