サッカー大好き芸人・カカロニすがやが各大学のサッカー部に体当たり取材する『カカロニ・すがやの大学サッカーReport』。第2回は、大学サッカーの強豪である明治大学体育会サッカー部さんの練習見学に。練習終了後、栗田大輔監督と中村草太選手にインタビューのお時間をいただきました。
監督とサラリーマンの二足の草鞋
すがや:大学サッカー部に取材にいく新連載「カカロニ・すがやの大学サッカーReport」。第2回は、明治大学体育会サッカー部さんにお邪魔しています。まずは栗田大輔監督にお時間をいただきました。栗田監督、よろしくお願いします。まずはこれまでの経歴を教えていただけますか。
栗田大輔監督(以下、栗田):はい、よろしくお願いします。生まれは静岡県清水市。ご存知とは思いますが、サッカーが盛んな地域です。僕も清水東高校でサッカー部に所属していました。近い世代のスター選手でいうと、清水商業高校の三浦文丈や藤田俊哉がいました。高校では全国大会には出場できず、その後、推薦で明治大学へ入学しました。
すがや:いきなりビッグネームが出てきますね……!
栗田:大学卒業後は、 サラリーマンの道を選びました。清水建設株式会社に入社して、以降、一昨年まで30年間勤めていたんですよ。
すがや:そうだったんですか!? 随分前から栗田監督のお名前はお聞きしていた気がするのですが……。
栗田:監督としては10年ですかね。なので、一昨年までは兼業……というか、明治大学のサッカー部はボランティアみたいな形です。お給料は清水建設からいただいていましたから。
サッカー部には、2013年にコーチという形で携わるようになりました。当時は、長友佑都(現:FC東京)を輩出したり、関東リーグで優勝をしたりして、かなり強かったです。当時の総監督から、“サラリーマンをしていたり、自分でサッカーチーム(FCパルピターレ)を作ったり、サッカーだけじゃない、色々な角度から物事を見ている人間が必要なんだ”と言われ、明治大学体育会サッカー部に加わりました。
周りからは「サラリーマンなんだから、無理しなくていいですよ」と言われましたが、練習の熱さを目の当たりにしたら、週末だけきて、ちょっとアドバイスして……みたいな、中途半端な立ち位置じゃ関わったらダメだと思ったんです。今日、すがやさんにも一部参加してもらいましたけど、朝6時からこれだけ練習するって、なかなか聞かないでしょう?
すがや:聞かないです。本当にびっくりしました!
栗田:だから、僕も朝6時にきて練習をみて、その後に出社するという生活でした。いま振り返ると、清水建設の上司の方がすごく理解のある方で「うまくやれよ!」って言ってくださっていたから、できたことです。
すがや:素敵な上司の方々だったんですね。そこから、2014年に明治大学体育会サッカー部の監督に就任されますよね。“明治大学はプロの養成所ではない”とお話されているのをお聞きしたことがあるのですが、サッカー以外の指導で心掛けていることはなんでしょうか?
栗田:すごくシンプルに「心」を育てる。物事の本質を見極める力を持ってもらいたいということ。「価値観を植えつける」っていうのは違うじゃないですか。「僕の価値観はこうで、こういう色だから、あなたも同じ色になろうよ」という押しつけはしない。生きてきた世界も違うし、同じ物を見たって、きれいと思う人もいれば、汚いと思う人もいる。そういう価値観を揃える作業は必要ないと思っています。
良いことは良い、悪いことは悪い、という社会の基準があるじゃないですか。例えば「人を傷つけること」は悪いことだし、「思いやりを持って接する」は良いこと。そういった当たり前のことをしっかり伝えていきたい。
あとは、社会に出たときに、「僕はサッカーが上手い。ずっとサッカーが上手くて生きてきた僕の考え方はこうだから、世の中もこうでしょ?」これはまったく違う。今年、うちはリーグ戦で無敗優勝したけれど、社会に出たら、そんなことはほとんどの人は知らない。優勝できたのは本当に素晴らしいけど、驕ってはいけないよ、ということです。
すがや:勉強になります。高校サッカーまで割と「サッカーが上手い人が正義」みたいな環境もあったりすると思うんです。練習態度が悪くても、試合で点をとったらそれでいい……みたいな。でも、今日の練習をみたら、明治大学にはそういう態度の選手がひとりもいませんでした。これは、元から素直な選手が入ってくるんでしょうか?
栗田:いやいや、やっぱり入りたてはプライドが見えますよ。世代別の日本代表選手とか、高校サッカー選手権大会で優勝したとか、そういう選手が入ってきますから。
でも、そこにあぐらをかいている瞬間に、他の選手に抜かれてしまいます。うちは『明治発、世界へ!』というスローガンを掲げていますが、結局、どの世界でも上には上がいます。だから常に上を目指していかないと。過去の経歴は自信にしていいけれど、自分の胸にしまっておきなさい、と。その自信をもって、どこを目指して、どこに向上心をもてるのか。
あと、僕は『特別な存在』は作らない。みんなが等しく上を目指す集団であってほしいので。自分の甘さ、置かれている現状に気づいて、努力を重ねる選手はやっぱり上にいきますよ。
『プロ』の根底にあるものはどの仕事も同じ
すがや:大学生は、その後、基本的には就職活動をして、社会人になるという人生の大きな転換期を迎えます。それがプロサッカー選手、サラリーマン、また別の道と分かれていくと思いますが、プロサッカー選手を目指す人と、一般企業に就職する選手で指導を変えたりはするのでしょうか?
栗田:いえ、みんなまったく同じ指導です。営業マンのプロ、お笑いのプロ、サッカー選手のプロって何か違うんですかね? それぞれ扱っているものは違うと思いますが、根底にあるものはほぼ変わらない。共通点も多いと思うんです。どのお仕事も自分の武器をどう活かすか、どう作っていくかじゃないですか。同じことを教えた上で、どう受け止めて、考えていくのか……それが、その人ならではの“オリジナリティ”になっていくと思います。だから、考えない人は自分の色、アイデアなどは少なくなりますね。
先ほど、“明治大学はプロの養成所ではない”という話もありましたが、サッカーに限らず、いち社会人として、その道のプロを目指してもらいたいので、指導は人によって変えることはしません。
すがや:一般企業で長年勤められていた栗田監督だからこそ、という面も垣間見えて、とても素晴らしいと思いました。