「見失っても良いんだよ」
――様々なかたの言葉や教えを吸収している稲場さんだからこそお聞きしたかったのですが、アイドルとして活動していく中で、一番印象に残っている言葉などはありますか?
稲場:うわー、どうしよう、いっぱいあって悩みます!(笑)
――(笑)
稲場:いっぱいあるんですけど、今研修生時代の話をさせていただいたので、その頃の言葉で残っているのは「見失っても良いんだよ」という言葉です。研修生の頃、デビューできるか分からない状況で、もしデビューできなかったら別の仕事をしないといけないなと思って、一般企業に勤める自分をリアルに想像したりもしました。焦りもあって、悩んでいた時、その当時のマネージャーさんが親身になって話を聞いてくださったんです。
それだけでも救われたんですけど、話の最後に私が「自分を見失わないように頑張ります」って言ったんです。そうしたらマネージャーさんが「自分のことを見失うのは良いんだよ。見失わない人はいないから。それよりも、見失ったあと、本来の自分か、もしくは新しい自分に戻してくれる存在が周りにいるかどうかが大事だと思う。あなたにはそういう存在が周りにいる、ということを覚えておいてほしい」と言ってくださって、凄く心が軽くなったんです。
――凄くいい言葉ですね。
稲場:もっといろいろな事を柔軟に考えて良いんだ、と思えるきっかけになりました。当時の私は少しでも間違えちゃいけない、という気持ちが強かったからこそ、マネージャーさんはそういう言葉を自分に投げかけてくださったのだと思いますし、間違えたからこそ成長できた部分がたくさんあった実感があるので、今になって改めてこの言葉の重みを感じます。今はハロー!プロジェクトは卒業しましたが、アップフロントという組織にいる、そのありがたさと信頼を感じるたびに、この言葉を思い出します。
――逆に、今はグループを卒業されて、ソロで活動されていますが、ソロになるにあたって意識を変えたことなどはありますか?
稲場:もともと自分は完璧主義だったんですが、そればかりだと疲れてしまうよな、という考えの変化がありました。たまには妥協することも大事なんだな、完璧じゃないからこそいい部分もある、ということを自分の中で認めることも大事だな、という考えになったんです。どなたかに聞いた話で、まっすぐ過ぎる硬い木は大きな衝撃を受けると折れてしまうけど、しなりのある柔軟性のある木なら折れずにそのまま伸びていける、という言葉を聞いて、たしかに! と思ったんです。
そんなフェーズを経て、グループの後期などは、グループのバランスを良く見ていたんです。今、このメンバーはこういう状態だから、そっとしておこう、とか、このメンバーにはこういう言葉をかけたら良いな、とか、自分なりに気を使って。そうすると、他者に意識が行き過ぎて、自分自身の意見がブレてしまってたんです。ソロになってからも最初のうちは、その考えが抜けなかったんですけど、自分の意見や意思をしっかりと伝える、というのも大きな仕事のひとつだな、というのを学びました。
自分自身と向き合う時間が増えて、どこにこだわって、どこはスタッフさんや他の方の意見を聞いて、というのが分かってきた。それが大きな変化ですね。
丸みや柔らかさを意識した背中に注目
――今、こだわりという言葉が出ましたが、11月15日に発売される写真集『香愛』にはどのような部分にこだわりが詰まってますか?
稲場:着てみたい衣装を参考画像で送らせていただきました。このAmazon限定カバーの衣装は、台湾の撮影ということもあって、ちょうど良いかなと思って、提案させていただきました。衣装のほかにも、メイクにもこだわりがあって、すべてをメイクさんにおまかせするのではなく、このカットでは濃いめのリップとか、逆にこのシチュエーションではあえて軽めにして、すっぴん感を出したほうが合うな、とか、パーツのメイクは自分の意図でやらせていただいたのも楽しかったです。
――拝見して、稲場さんと台湾という地がすごくマッチしているなと感じました。台湾という土地の持つ若干のミステリアスさと、稲場さんのミステリアスさがうまくマッチしているような…。
稲場:えーっ! ミステリアス! そうですか!? 嬉しいです。でもたしかに、あまりファンのみなさんにはお見せしていない、大人な雰囲気があるかもしれない。実際には、こういう中華風のメイクなどは好きで、プライベートでよくしていたので、自分の中では特別な感じではなかったんですけど、周りの方々には褒めていただけるのが嬉しいですね。
――コメントには「裏テーマは背中!」と書かれていましたが、そのとおり、素敵な背中も見どころのひとつです。
稲場:ありがとうございます! 『ラヴリネス...』という写真集で、ニットで胸元が空いている衣装を着た時に、いろいろな方から「良いね!」と言っていただいて、今回もニットがあると思ったら、今度は背中が大胆に開いているニットで、このカットも印象に残っています。
背中のケアにも気を遣いました。ほど良い食事制限をして、水分量の多い肌、湿度の高い場所での撮影の時に肌が艶っぽく見えるようにしたいな、と思ったので、そこが伝わっていたら良いなと思います。個人的には、筋がしっかり入っている背中のカットも好きなのですが、今回は女性らしさ、丸みや柔らかさを意識した背中もあるので、そこにも注目していただきたいです。
――タイトルの「香愛(こうあい)」、こちらも稲場さんご自身でつけられたのですか?
稲場:はい。このタイトルに関しては、いきなりこの言葉が降ってきた、みたいな感じなんですけど、調べたら実際にはない言葉だったのも良かったですし、私の名前を逆さまにしたものなので、知らない方が本屋さんなどで見かけたときにも、自分の名前を印象付けられるかなと思って、つけさせていただきました。横文字のカッコいい感じもイメージしたんですけど、個人的に英語が頭に入ってきにくくて…(笑)。
実際に出来上がりを見ても、台湾で撮った写真の雰囲気とも合っていたので、良かったなと思いましたし、1冊目の写真集のタイトルが『愛香』だったので、その頃とはまた違った私を見せられる、という意味も込められています。


Newsクランチ!編集部