エルヴェ

くさい度数★★★★

エルヴェも、ベルギーで生まれた 15 世紀に 遡る修道院起源のチーズで、とても立派なくさみをもっている。

▲修道院 イメージ:PIXTA

ドイツへ行ったとき、レストランで黒パンとワイン、そしてエルヴェを注文し、ニヤつきながら食べていたら、ドイツ人の友人が肩をすぼめ、小声でささやいてきた。 「わがドイツにはほかに、もっとにおいの強いティルジッターというチーズがある。ドイツの紳士はそれを外で食べたら、そのあと口をよくすすいでから帰宅することになっている。奥方にあらぬ疑いをかけられると困るからね」

▲黒パンとチーズ イメージ:PIXTA

そう、うそぶくのである。そして、お互い顔を見合わせて、またニヤリとするのだ。そんな愉しいチーズである。

自らを“発酵仮面”と称し、世界中のチーズを食べつくしてきた小泉教授に、それぞれの「くささ」の度合いについて星の数で五段階評価してもらった。 発酵食品は宿命的に、くさいにおいを宿しているが、それこそが最大の個性であり魅力なのだ。

「くさい度数」について
★あまりくさくない。むしろ、かぐわしさが食欲をそそる。
★★くさい。濃厚で芳醇なにおい。
★★★強いくさみで、食欲増進か食欲減退か、人によって分かれる。
★★★★のけぞるほどくさい。咳き込み、涙する。
★★★★★失神するほどくさい。ときには命の危険も。

※本記事は、小泉武夫:著『くさい食べもの大全』(東京堂出版:刊)より、一部を抜粋編集したものです。