ハニーム・ゲベイ

くさい度数★★★

トルコへ行ったときは、ハニーム・ゲベイというチーズを見つけて、思わずニヤリとしてしまった。ベリーダンス〔トルコ語ではオルヤン・ダンス=東方舞踏〕を踊る女性の姿が、ふと頭に浮かんだからである。

ベリーダンスは、もともと中東やアラブ圏をルーツとするダンス形態で、肌を露出した女性たちが、腰を激しくふったり、しなやかにしゃくりあげたりしながら官能的に踊るのが特徴だが、ハニーム・ゲベイは、そのベリーダンスの踊り子たちのヘソとそっくりな形をしているのだ。

▲ベリーダンサーのヘソ イメージ:PIXTA

このチーズを目で愉しみながら、鼻でにおいを堪能し、殿方諸氏は想像を搔き立てられてニヤリとしながら、ぐいーっと一杯ひっかけるのである。

自らを“発酵仮面”と称し、世界中のチーズを食べつくしてきた小泉教授に、それぞれの「くささ」の度合いについて星の数で五段階評価してもらった。 発酵食品は宿命的に、くさいにおいを宿しているが、それこそが最大の個性であり魅力なのだ。

「くさい度数」について
★あまりくさくない。むしろ、かぐわしさが食欲をそそる。
★★くさい。濃厚で芳醇なにおい。
★★★強いくさみで、食欲増進か食欲減退か、人によって分かれる。
★★★★のけぞるほどくさい。咳き込み、涙する。
★★★★★失神するほどくさい。ときには命の危険も。

※本記事は、小泉武夫:著『くさい食べもの大全』(東京堂出版:刊)より、一部を抜粋編集したものです。