フェタ

くさい度数★★★

世界で一番チーズをたくさん食べている国は、フランスでもなく、ドイツでもなく、じつはギリシャである。ギリシャでは神話の時代からチーズづくりが行われていて、現在の年間の1人当たりのチーズの消費量は、日本のおよそ15倍に上るというから驚きだ。

▲世界で一番チーズを食べている国・ギリシャ イメージ:PIXTA

そのギリシャで最も人気のあるチーズが、フェタチーズである。フェタは、ヒツジ(またはヤギ)の乳を原料につくられるギリシャの伝統的なチーズで、世界最古のチーズともいわれている。

塩水の中で熟成させるため、強烈な塩味がする。水に漬けて塩抜きしてから食べても、かなり塩辛い。塩味以外は、わりと淡白な味わいでクセがないが、食べているうちにヒツジの乳のにおいが鼻をついてくる。

しかし、これもご愛嬌で、食べ慣れるとその奥深いコクがやみつきになる。こってりとした食感も嬉しくて、ギリシャの伝統料理にフェタが欠かせないといわれるのもうなずける。

グリークサラダは、ギリシャのフェタ料理の代表で、季節の野菜やオリーブの実、アンチョビなどを和えたサラダに、適当な大きさにちぎったフェタをトッピングしたものである。

日本でもギリシャ風サラダといった名称で、このサラダを提供しているところが結構あるからご存じの方も多いだろう。フェタの真っ白い色がアクセントとなり、見た目も美しく、ヘルシーで、とくに女性におすすめのサラダである。

▲サガナキ

ギリシャでは、フェタをフライにした料理(サガナキ)もあるようで、塩味が強いので調味しなくてもうまそうである。

自らを“発酵仮面”と称し、世界中のチーズを食べつくしてきた小泉教授に、それぞれの「くささ」の度合いについて星の数で五段階評価してもらった。 発酵食品は宿命的に、くさいにおいを宿しているが、それこそが最大の個性であり魅力なのだ。

「くさい度数」について
★あまりくさくない。むしろ、かぐわしさが食欲をそそる。
★★くさい。濃厚で芳醇なにおい。
★★★強いくさみで、食欲増進か食欲減退か、人によって分かれる。
★★★★のけぞるほどくさい。咳き込み、涙する。
★★★★★失神するほどくさい。ときには命の危険も。

※本記事は、小泉武夫:著『くさい食べもの大全』(東京堂出版:刊)より、一部を抜粋編集したものです。