弱点を克服しようとしても、平均値までが精一杯
2001年にベストセラーとなった『さあ、才能(じぶん)に目覚めよう──あなたの5つの強みを見出し、活かす』の中で、クリフトンと共著者のマーカス・バッキンガムはこう述べています。「人生における本当の悲劇は、十分な長所を持たないことではなく、持っている長所をうまく使えていないということである」。
本当にたくさんの人々が、自分のそして他人の不得意なことばかりに集中し、潜在能力に気づかずにいるのです。まさに悲劇ではありませんか。弱点の克服に費やしている時間を、私たちの奥底に燃えている炎を大きくすることに利用するほうがよほど賢明です。
『自己探求の時代』でピーター・ドラッカーが的を射た指摘をしています。「一流の能力を卓越したレベルにまで引き上げるよりも、無能を月並みにすることのほうに、よほどエネルギーがいる」。
弱さを克服するよりも、すでにある強さをさらに強くするほうが簡単なのであり、もたらされる成果もはるかに大きいのです。2012年の『How to Be Exceptional(特別になる方法)』の中で、ジョン・H・ゼンガー、ジョゼフ・R・フォークマン、ロバート・H・シャーウィン・ジュニア、そしてバーバラ・A・スティールの4人は、ドラッカーの見解を肯定する調査結果を発表しました。
彼らの会社は2万4,600人を超えるリーダーを対象に、特定のリーダーシップ能力の自他評価となる「360度フィードバック評価」を行ったのですが、その際リーダーがどれほど弱点の克服に努めようと、総合的な効果の尺度に照らし合わせると平均的な能力にまで改善するのが精いっぱいであることがわかったのです。
能力の多くで平均以上だった人々でさえ、弱点を平均より上にすることはできません。一方、評価対象とされた5つの能力のうち3つで優秀だった人の比率は全リーダーのうち10パーセントに満たず、彼らのほとんどは会社で最高のリーダーの1人に数えられていました。
ゼンガーとフォークマンはさらに調査を実施し、長所を伸ばすことに努力するリーダーは、弱点にこだわるリーダーよりもおよそ2倍の評価を得ることも証明しました。同時に他の能力も向上します。ところが弱点を主体に目を向けていれば、そんな効果は期待できないのです。ゼンガーやフォークマンらが実証してみせた原則を、現代の偉大なリーダーやパフォーマーたちの多くは無意識のうちに理解していたのでしょう。