「優れたリーダーには、どんな要素が必要なのか?」と悩んでいるビジネスパーソンは多く、その答えも複雑であり簡単に見つかるものでもありませんが、リーダーシップ開発組織「ポテンシャライフ」の創業者であり、ハーバードで人気No.1講義を展開したタル・ベン・シャハー氏とマッキンゼーで活躍したアンガス・リッジウェイ氏は、さまざまな分野で称賛されているリーダーたちには共通点があるとしています。

※本記事は、タル・ベン・シャハー/アンガス・リッジウェイ:著『10倍リーダーシップ・プログラム』(ワニブックス刊)より、一部を抜粋編集したものです。

長所を仕事に活かすことが成功への道

アメリカでもっとも広く知られている世論調査会社のギャラップ社は、世界で最大規模の経営コンサルティング会社に成長しました。特に人間の行動の計測と理解に優れていて、長所を活かしたアプローチを応用するという点では世界的な権威といえます。

ある調査で、さまざまな国の人々に「弱点を知り、それを改善しようとすることと、長所を知り、それを活かそうとすることのどちらが人生をより成功に満ちたものにすると思うか?」という問いかけをしました。

それによると、アメリカだけでなくどの国でも長所を選んだ人々は少数派でした。ところが興味深いことに、長所のほうを選んだ人々のほうが成功していたのです。

ギャラップ社の「Q12調査」は12の単純な質問で構成されていて、仕事に対する従業員のモチベーションや前向きさを予測するために、世界中のあらゆる分野の大小さまざまな組織で利用されています。

どの質問もビジネスにおける成功の主要な指標に関連しているのです。「Q12調査」の問いの1つ、「仕事で、自分が得意なことをする機会が毎日あるか?」に対する答えを集計したとき、ギャラップ社は長所に目を向ける少数のほうがより多くの成功を手にしていることを発見しました。

この質問に「ある」と答えた人のほうが、そうでない人よりも、生産性の高いビジネスユニットで働いている確率が38パーセント、顧客の満足度が高いユニットで働いている確率が44パーセントも高かったのです。

ギャラップ社は長所にもとづくアプローチと成功の間の因果関係を証明しようとしました。同社がマネジャーたちに従業員をよく知り、彼らの強みを伸ばすようアドバイスしたところ、業績も仕事に対する満足度も明らかに高まったのです。

残念なことに調査の結果によると、自分の長所が毎日活用されていると考えている人は全世界で20パーセント程度でした。加えて、上級職に就いている人ほど、長所を活かせている割合は少なかったのです。つまり、私たちのほとんどにとって向上の余地があるということです。
 
1980年代、ギャラップ社は世論調査から、より体系的かつ心理学的なインタビューに活動の中心を移しました。この新時代を切り開いたのは、米国心理学界から長所にもとづく心理学の父として認められているドナルド・クリフトンでした。1950年代、大学院生だったクリフトンは、心理学は問題や病気にのみ目を向けていることに気づきました。

そこで彼は、人の成功というものを研究対象にすることに決め、人々と仕事環境をうまく組み合わせるのに役立つ方法について考え始めました。生まれ持っての長所を仕事に活かすことが成功への鍵であることに気づいたのは、他の誰でもないクリフトンだったのです。