泡菜(パオツァイ)

くさい度数★★★★

泡菜は中国・四川省の特産品で、中国ではおなじみの漬物のひとつである。

四川省 イメージ:PIXTA

日本の糠(ぬか)漬けと同じように、材料には手近にある野菜が使われる。ダイコン、カブ、ニンジン、ウリ、キャベツ、レンコン、ハクサイなど、好みの野菜を適度にカットし、それをかめに入れて、トウガラシ、八角、サンショウ、桂枝末のほか、砂糖、高粱(コウリャン)酒、甘草などを加え、塩分約8%の塩水に漬け込む。

日本の糠漬け イメージ:PIXTA

泡菜を漬けるためのかめというのが、ちょっとおもしろい。蓋の部分に工夫が施してあって、溝になっているところに水を満たすとかめの中が密封されるしくみになっているのだ。これにより、外気が遮断されて乳酸菌がどんどん増殖し、酸味の強い漬物ができあがる。

しかも一方で、かめの中で発生した発酵ガスは、順次、水を通して排気される。このとき、水がぶくぶくと泡立つことから、泡菜の名がついたといわれている。

数日で漬け上がるので、食べる分だけ取り出して、新しい野菜を補充していく。一晩漬けた浅漬けもうまいが、においを堪能するなら、古漬けのほうがおすすめである。ごはんのお供として、また炒めものやスープなど幅広く使える漬物である。

四川省では、各家庭にたいてい泡菜用のかめが置かれており、それぞれ代々受け継がれてきた味がある。泡菜用のかめは、嫁入り道具のひとつになっているというから、将来のおふくろの味といっていいだろう。

自らを“発酵仮面”と称し、世界中の漬物を食べつくしてきた小泉教授に、それぞれの「くささ」の度合いについて星の数で五段階評価してもらった。 発酵食品は宿命的に、くさいにおいを宿しているが、それこそが最大の個性であり魅力なのだ。

「くさい度数」について
★あまりくさくない。むしろ、かぐわしさが食欲をそそる。
★★くさい。濃厚で芳醇なにおい。
★★★強いくさみで、食欲増進か食欲減退か、人によって分かれる。
★★★★のけぞるほどくさい。咳き込み、涙する。
★★★★★失神するほどくさい。ときには命の危険も。

※本記事は、小泉武夫:著『くさい食べもの大全』(東京堂出版:刊)より、一部を抜粋編集したものです。