キムチ

くさい度数★★★★

キムチは朝鮮半島に古くから伝わる代表的な野菜の発酵食品である。日本では昭和50年代以降、キムチの消費が急速に伸び、いまや漬物の中で最も人気のある商品となっている。

キムチ イメージ:PIXTA

漬物大国ニッポンとしてはちょっと複雑な思いだが、うまいものはうまい。とくに、白いごはんとの相性が抜群だから人気があるのも当然だ。糠(ぬか)漬けをくさいといって敬遠する若者でも、キムチのニオイは大歓迎のようで、喜んでパクパク食べている。

キムチのニオイは、香辛料として使われるニンニク由来の成分が主体で、そこに発酵過程で生じる発酵臭が加わって形成される。

キムチといえばトウガラシの赤い色がすぐ頭に浮かぶが、じつはもともとキムチにはトウガラシは使われていなかった。

塩味を基本として、ショウガ、サンショウ、タデ、ニンニクなどで味付けされていたのだ。それが 17 世紀後半頃、南米起源のトウガラシが朝鮮半島に伝わり、以来、キムチにトウガラシが使われるようになったといわれている。

トウガラシ イメージ:PIXTA

トウガラシの導入は、朝鮮半島の漬物文化に大変革をもたらした。これを機にキムチの種類はどんどん増え、食生活の中での漬物の存在が飛躍的に拡大したのである。

自らを“発酵仮面”と称し、世界中の漬物を食べつくしてきた小泉教授に、それぞれの「くささ」の度合いについて星の数で五段階評価してもらった。 発酵食品は宿命的に、くさいにおいを宿しているが、それこそが最大の個性であり魅力なのだ。

「くさい度数」について
★あまりくさくない。むしろ、かぐわしさが食欲をそそる。
★★くさい。濃厚で芳醇なにおい。
★★★強いくさみで、食欲増進か食欲減退か、人によって分かれる。
★★★★のけぞるほどくさい。咳き込み、涙する。
★★★★★失神するほどくさい。ときには命の危険も。

※本記事は、小泉武夫:著『くさい食べもの大全』(東京堂出版:刊)より、一部を抜粋編集したものです。