自分の弱さも受け入れられるのが「真の強さ」
勝負の世界は、いつも残酷です。試合が終わった後、テレビには映らないバックヤードの廊下では、勝者は仲間と歓喜に溢れ、敗者は仲間と悲しみに暮れるのです。
対戦相手のチームアレクサンダーは、全員が大発狂してお祭り騒ぎ。しかし、敗者となった僕たちチームマックスは、誰も一言も喋らずお通夜のようでした。
控え室に戻ると、誰より負けず嫌いなマックス・ホロウェイは、自分自身を悔しそうに罵りながら、ローキックで蹴られて腫れた両脚を冷やしていました。自分自身に腹を立てているのは、誰の目にも明らかでした。
僕たちコーチは一言も言葉を発することなく、ただマックスを見守るしかありませんでした。
マックス・ホロウェイの息子のラッシュは、悲しい目をしながら父親であるマックスを見つめています。それに気がついたマックスは、ラッシュを自分のそばに呼んで「心配するな」とでも言うように、ラッシュにそっとキスをしました。
マックスは父親として、ラッシュに自分の生き方のすべてを見せています。強さも弱さも、いい時も悪い時も……。この光景は僕の胸に深く刻まれ、決して忘れることはないだろうと思います。
試合前、マックス・ホロウェイは次のコメントを残しています。
「今ここに、僕の息子が来ている。まだ7歳だが人生経験をさせている。人生にはいい時も悪い時もある。この生活がいつまで続くか僕にはわからない。息子は僕がUFCの契約を手に入れた日に生まれた。文字通り、この人生に生まれ落ちてきたと言えるだろう」
マックスは「人生はいい時だけではない。悪い時こそ学びの時期だ」と日頃からよく言っています。
悪い時は自分の弱さから逃げずに向き合い、乗り越えようと努力すること。その時間こそが、成長のための学びの時間になるというのです。この言葉通りにマックスは、今までどんな困難な状態からも上を目指して、立ち上がってきました。
そして僕たちチームマックスも、今回の「負け」からたくさんのことを学び、さらに成長していこうと誓いました。人生で大切なことを、いつもマックス・ホロウェイからたくさん学ばせてもらっています。
僕もマックスのように、「自分の弱さ」も受け入れられる「真の強さ」を身につけたいと心から思っています。どんな時も言葉と行動が一致していてブレないマックスを、僕は心からリスペクトしています。
※本記事は、井谷武:著『史上最高のパフォーマンスを引き出す 知性を鍛える究極の筋トレ(マガジンハウス:刊)』より一部抜粋編集したものです。