一番居心地がよさそうなところに座ってね

亀仙人 「よく来てくれたね」

友だちのように笑顔で挨拶する亀仙人に、私は少々緊張しながら答えます。

ひなた 「せ、先日は、あっ、ありがとうございました」

初めて入る診察室はかなりの広さです。奥にオシャレな大きなデスクがあって、亀仙人がこちらを向いて座っています。

手前にはコの字型のソファー。真ん中には小さなイスを2つほど従えたガラステーブルが置かれています。テーブルの上には雑誌と新聞。文字のいっぱい書かれたホワイトボードに、ごちゃごちゃと本が詰め込まれた本棚もあります。

調度品のすべてが、これぞミッドセンチュリーといったミニマルデザインで統一されていて落ち着きます。

私の思っていた心療内科の診察室は、もっと狭くて、先生とは近くで向き合って……、とにかくイメージとは大きくちがいます。

ひなた (診察室というよりは社長室? いや社長室にしてはゴチャゴチャとしすぎ。これはまるで家のリビング? 亀仙人の部屋に遊びに来たみたいだ)

キョロキョロあたりを見回す私に、亀仙人は言います。

亀仙人 「普通の診察室は思いっきり対面式だからね。それだと威圧感あるでしょ」

ひなた 「たしかに……」

亀仙人 「うちは、できるだけリラックスして話せるように、威圧感を取り除いて、照明やルームアロマにも気を配ってるんだ」

ひなた 「へぇ~……。それにしてもゴチャゴチャしすぎてません?」

亀仙人 「でもね、これだと話しながらあっちこっちに視線をやれるでしょ?」

たしかに、こんなふうにいろいろと物があれば視線をそっちにやりながら、気楽にやりすごすことができそうです。

ひなた 「どこに座ればいいんでしょうか?」

亀仙人 「好きなところに座ってくれていいから」

なんとなく、私は左側のコの字形ソファーに腰を下ろしました。

▲一番居心地がよさそうなところに座ってね

亀仙人 「一番居心地がよさそうなところに座ってもらわないとね。だって、初診は長めに話を聞くことになるからね」

ひなた 「長め?」

亀仙人 「そう、軽く2、3時間はかけて、いろいろ話を聞かせてもらうことになるから」

ひなた 「2、3時間!」

思わず甲高い声が出てしまいました。

(2、3時間も! そんな診察聞いたことがありません)


『「薬に頼らず、うつを治す方法」を、聞いてみた』は次回8/13(木)更新予定です、お楽しみに。

※本記事は、亀廣聡・夏川立也:著『復職後再発率ゼロの心療内科の先生に「薬に頼らず、うつを治す方法」を聞いてみました』(日本実業出版社:刊)より一部を抜粋編集したものです。