意欲と気分が合致せずに動けないつらさ
亀仙人は、ホワイトボードに青と赤のマーカーを使って、少しずれた波形を重ね合わせた図を描いて一生懸命に説明します。
・意欲はあるのに気分が悪くて動けない。だからあせる。
・気分はいいのに何かしようという意欲が湧いてこない。だからイライラする。
1.波形がずれているので同調せず、少しずつ気分と意欲の差が開き、気分はよくても意欲が湧かない状態が生まれる。
2.そこに意欲が追いついてくると、気分も意欲も一致してプラスになる軽躁状態になる。
3.次に逆転がはじまって、意欲はあるのに気分が悪いという状態になる。
4.さらに時間が経過すると、気分と意欲がマイナスで一致する状態が生まれる。(いわば底打ち体験)このサイクルを、ときに数か月から数年かけて繰り返すのが「双極性障害」で、波形のずれによる「躁状態」と「うつ状態」が混合して存在してしまう「混合状態」が特徴です。
このような「躁うつ混合状態」になると、なんとも言えない不安感や焦燥感に襲われて、いても立ってもいられないイラだちを感じてしまうそうです。それに、さきほどの自律神経失調状態も加わるのです。そして、思考が昂進状態(※6)になると、ネガティブなこと悪いことばかりを、グルグルといつまでも考え続けてしまうのです。
双極性障害の最大の問題は、波形のズレによる混合状態だと亀仙人は言いました。
亀仙人の説明を聞いて、私は知らないうちに心の声をつぶやいていました。
ひなた 「双極性障害って、脳神経系のズレが原因なんですね……。意欲と気分が合致せずに動けないつらさ、わかります。たしかに、つらい状況ですよね」
亀仙人 「波形のズレを小さくすることが双極性障害の治療なんだ。薬に頼らずに治すことができるから安心して」
※本記事は、亀廣聡・夏川立也:著『復職後再発率ゼロの心療内科の先生に「薬に頼らず、うつを治す方法」を聞いてみました』(日本実業出版社:刊)より一部を抜粋編集したものです。