『グッド』の場合、即効性はなくても持続性がある

亀仙人のレクチャーは、たしかに筋が通っていて納得できます。私の真剣な眼差しに応えるかのように、亀仙人は続けます。

亀仙人 「混合状態がつらくて不安を訴える人に、精神科医がその不安にだけ焦点をあてて話を聞けば『不安神経症』という病名になって、抗不安薬を与えるという治療になる」

ひなた 「うつではないのに、うつだと診断されるのと同じですね」

亀仙人 「そうだよ。表層の症状だけをとらえて、本質が全然見えていないんだ。本質を見るためには、30分やそこらの初診では絶対に不可能だと断言するよ」

ひなた 「要するに、多くの症状は根本を見れば、双極性障害でくくることができるってことですね……」

亀仙人 「そうなんだ。不安や焦燥から逃れたくてお酒を飲むって、誰にでもあるでしょ」

亀仙人 「みんなストレスからくる、不安やあせりから逃れるために、さまざまな行動をとっているんだ。そういうのを『セルフメディケーション』といって、よいものを『グッドセルフメディケーション』、悪いものを『バッドセルフメディケーション』と名づけることにしよう」

亀仙人 「要するに問題は、程度と『グッド』か『バッド』かに尽きるんだ」

ひなた 「お酒でストレス発散自体は『バッド』ではないけれど、度を越すと周囲に迷惑をかけることになって『バッド』ですもんね」

亀仙人 「『グッド』の場合、即効性はなくても持続性があるんだ。うちのクリニックでは、時間をかけて、この『グッドセルフメディケーション』というのを教えていくんだ」

▲『グッド』の場合、即効性はなくても持続性がある イメージ:PIXTA

※本記事は、亀廣聡・夏川立也:著『復職後再発率ゼロの心療内科の先生に「薬に頼らず、うつを治す方法」を聞いてみました』(日本実業出版社:刊)より一部を抜粋編集したものです。