部下への指示は「お願い形」が基本

あなたが若い頃に、上司から「あれをしろ」「これをして」と指示を出されたら、どのような気持ちになったでしょうか? おそらくは上から目線の指示の出し方に、反発心を覚えたこともあったのではないでしょうか。

一方「~してください」といった丁寧語なら、前述の命令形よりは柔らかい印象になります。

しかし、この言い方も一方的に伝えているだけなので、マナー的には命令形とみなすのです。相変わらず、部下には疑問を挟む余地がなく、相手の意向を無視していることになるわけです。

命令形は部下に好まれない――。そのように強く心に刻んでおきましょう。命令形は反感を買うきっかけとなり、円滑なコミュニケーションを阻害します。

「~してもらえるかな?」と、常に相手の立場にたって、相手の意向をうかがうのがマナー。部下に指示を出すのであれば、上記のような言い方がふさわしいでしょう。

部下に仕事をお願いする言い方に、釈然としない人もいるかもしれません。しかし、それは不要なプライドです。素敵な愛され50代は、このような考え方とはおさらばしましょう。 

実るほど頭こうべを垂れる稲穂かな。お願いするように指示を出すことで、部下は快く 指示に従い、期待通りに動いてくれるでしょう。

▲部下への指示は「お願い形」が基本 イメージ:PIXTA

「クッション言葉」をマスターしよう

お願いするように指示を出すことには、2つの大きなメリットがあります。

1つめは、相手を尊重する謙虚な姿勢が、さりげなく部下に伝わること。部下に好感を持ってもらえるわけです。

2つめのメリットは、部下に「イエスかノーか」の選択権を与えていることです。

もちろん「~してもらえないかな?」といった言い回しでも、上司からの指示に変わりはありません。従わない部下はまずいないでしょう。それでも選択権が与えられたことで、部下の心には余裕が生まれます。それはあなたに対するプラスの感情につながります。

お願いするような言い方をされれば、部下側も、事前に分かっていない部分が尋ねやすくなり、ミスも減るでしょう。

お願い形のほかにもう1つ、指示全体の印象を大きく変えて、あなたへの好感度を高める言葉遣いがあります。それが「クッション言葉」です。

クッション言葉とは本題の前に、相手をおもんぱかる気持ちを伝える言葉のことです。お願い形と組み合わせると、次のような言い換えができます。

「急いで田中さんに電話をして!」

「申し訳ないけど、急いで田中さんに電話をしてもらえるかな?」

「コピーをお願い!」

「忙しいところ悪いんだけど、コピーをお願いしてもいい?」

このようなクッション言葉が添えられたことに、部下はあなたの気遣いを感じます。より一層、あなたへの信頼を高めることでしょう。部下の名前を呼びながらだと、さらに効果は高まります。