その「テレワーク」、コントかよっ!
緊急事態宣言が出された4月7日、各報道機関のネットニュースに「テレワーク」のタイトルが踊った。
[きょう緊急事態宣言。企業でテレワーク導入加速。新型コロナ](2020年4月7日 NHK)
[国会もテレワークを。自民党の若手議員「ネット出席」を提言](2020年4月7日 時事ドットコム)
SNSでも3月以降この言葉が飛び交い、多くの人たちが自分の「テレワーク・スタイル」や「在宅仕事マイルール」を披露しているのを目にする。
しかし、在宅ワーク歴25年のフリーライターぼっち達人から見ると、違和感のある内容が多い。在宅ビギナーの方々に、ひとことふたこと、申し上げたくなる。
結論から書くと、テレワークには「フェイズ1」と「フェイズ2」があるから、その違いを認識しておいたほうがいいと思いますよ、という進言だ。
テレワークの形態は大きく分けて3つある。
(自宅で)在宅勤務。
(場所を問わない)モバイルワーク。
サテライトオフィス勤務(会社の第3拠点)で。
現在、注目されているのは在宅での勤務。以下これを「在宅ワーク」と呼ぶ。「テレワーク」だとカッコ良すぎて、世界を旅しながらPCとネットワークを駆使して仕事をこなすエリート俺様、みたいなスタイルも含まれそうだから、自宅での仕事を前提として話を進める。
SNSで語られ、いいねがたくさん付く在宅ワークスタイルは、次のようなものが多い。
・男性ならスーツにネクタイ、女性ならメイク。通常勤務と同じ服装をする。
・テレビは禁止、音楽はOK。
・1時間おきに休息をとり、ストレッチ。
・終わりの時間を決め、プライベートと区切る。
コントかよ! 最初に浮かんだ感想だ。
自宅でわざわざスーツを着てネクタイを締める。ここまでして通常と同じ形を再現するのであれば、そのうち自宅の部屋に電車のつり革を取り付け、立ったまま捕まって1時間揺られてから仕事に取り掛かる、という人まで現れるのではいかと心配でならない。
服装やメイクを整えるのはウェブ会議のためだとしても、だったら下半身はジャージやパジャマでもいいではないか。
「部屋の背景がウェブ会議に映り込むから、その背景をさりげなく毎日変えるのがデキるビジネスマンのこだわり」とかいう話を聞いたときは、もう一度「コントか! 親に内緒でキャバ嬢のバイトをしてる娘のアリバイ作りか!」と、ツッコミを入れずにはいられなかった。
おそらくこれらは在宅ワークの「フェイズ1」だけに通用するルールだ。
仕事とプライベートを分ける。在宅ワークを自宅での日常から切り離す。SNSで支持されているスタイルは、この信念に貫かれている。
そのためには服も着替えるし、テレビも付けない。スマホは手の届かない場所へ遠ざける。会社の環境を再現して、仕事モードのスイッチを入れる。ひとつの仕事のやり方としては、たぶん正しい。