東京・新宿の高層ビル群がハヤブサの住処に
みなさん、“ハヤブサ”という鳥をご存知でしょうか。
世界一速い鳥として知られています。その速さ、なんと時速300kmを超えると言われています。本来は海岸の断崖などに巣を作って暮らしているのですが、なぜかいま、東京で増えているのです!
申し遅れました。私、東京都大田区の「五十三次どうぶつ病院」で院長をしている北澤功と申します。
簡単に私の経歴を話させてください。1966年長野県生まれ。北海道の大学を卒業し、生まれ故郷の長野県にある長野市城山動物園に獣医として勤務。その後、2010年にいまのどうぶつ病院を開院しました。
この連載では、私がこれまで動物と関わってきた中で起こった様々な出来事や“事件”などを、お話していきたいと思います。
話を戻しましょう。
ハヤブサは、全長42~49cmほどになります。身近にいる鳥だと、大体カラスと同じくらいの大きさ。白いお腹に黒い縞模様が入っています。猛禽類(もうきんるい)に分類され、鋭い爪とくちばしを持ち、他の動物を捕食します。
目から頬にかけての黒いラインと黄色い目の縁取りは歌舞伎の隈取そっくり。かっと見開いた目は、市川海老蔵さんの睨みさながらといった感じです。
ハヤブサは高い位置を飛びながら獲物を見つけると、羽をとがらせロケットのような形で急降下。脚で蹴落としたり空中でわしづかみにして獲物を捕らえます。日本各地に生息しているのですが、一時期その数が減少していました。
しかし、人間の生活圏とうまく共存することに成功し、少しずつ生息数を増やしています。高層ビルを人工的な断崖と見立てて巣を作り、公園や街路樹に暮らす鳩やムクドリを餌としているのです。
上昇気流や下降気流などのビル風を利用して狩りをするハヤブサにとって新宿の高層ビル街は、最高の住処となったのです。新宿の空を颯爽と猛スピードで飛ぶ鳥を見つけたら、それはハヤブサかもしれません。