フクロウが日本からいなくなる!?

ハヤブサとは逆に、いま個体数が急激に減少している鳥がいます。それが、フクロウです。フクロウカフェなるフクロウと触れ合うところもあり、みなさんにとっても馴染みのある鳥ではないでしょうか。

私は現在、東京都の「傷病野生動物保護治療事業」に協力しています。

ある日、怪我をした鳥が動物病院に持ち込まれました。箱の中から、顔全体をくるくる回し大きな目で私を見つめていたのは、鳩よりもちょっと小さなフクロウ“オオコノハズク”です。

オオコノハズクは体長は約25cm。体色は褐色、灰色、黒色の複雑で細かい斑で、後ろ側に灰白色の斑があります。目はきれいなオレンジ色をしています。夜行性で、ネズミなどの哺乳類や鳥類、昆虫などを捕食します。

日本にいるフクロウの中では小さいサイズで、野生で目撃されることは滅多にありません。

▲オレンジ色の目が特徴的なオオコノハズク イメージ:PIXTA

診察を行うと、足の骨折による衰弱であることが分かりました……。フクロウは鋭い爪で獲物を捕らえるため、足のケガは致命傷となってしまいます。

保護された場所は東京都内。それも街の中だったので、都内にまだ生息していたことにビックリしました。生息数はとっても少なくなっていると思います。個体数を増やしたハヤブサと減らしたフクロウ、一体どこに違いがあるのでしょうか。

ハヤブサが、昼間に強い筋肉と硬い羽を生かしスピードで狩りをする。一方、フクロウは夜間にフカフカの羽で音をたてずに獲物を捕まえます。フクロウは周囲が暗ければ暗い程、狩りの能力を発揮できるのです。しかし、東京は暗闇がほとんどないため、フクロウにとって大変生きづらい環境になってしまったのです。

ハヤブサのように、人間の生活様式と上手く共存した生き物は増え、フクロウのように人間の生活様式に適応できない生き物は残念ながら数を減らしているのです。

病院に運び込まれたオオコノハズクは、その後も治療を続けたのですが、怪我の程度もひどく、運び込まれてきてから3週間後、天国に旅立ってしまいました。もう一度、月の光の中、大きな夜空を飛ばせてあげたかったな……。

獣医師をやっていると、必ず立ち会うのが、動物の死です。医学生の頃から動物園勤務時代、今の動物病院でも多くの動物の死に立ち会ってきました。しかし、いつになっても「死」に慣れることはありません。

ですが、命あるものには必ず死が待っている。この連載では、そういったことも取り上げられたらと考えています。

それではみなさん、また次回お会いしましょう。

「スーパー獣医 Dr.北澤のどうぶつ事件簿」は、次回9月29日(火)更新予定です。お楽しみに!!


<病院情報>
五十三次どうぶつ病院
〒143-0012
東京都大田区大森東1-5-2
電話番号:03-3761-5676
診療時間:午前9:00~12:00  午後13:00~19:30
※日曜日は午後17:00までとなります。  
休診日:月曜日
※新型コロナウイルス感染拡大により、診療時間が記載と異なる場合がございます。ご来院前にホームページにて、ご確認ください。
ホームページ:https://53tsugi.com/