本来は行楽の秋ですが今年はコロナ禍。どこかへ行きたいけれど、泊まりがけで出かけるのはちょっと……。かといって、家でマッタリするのもなんだかもったいない。そんなとき、名古屋から半日で行って帰ってこられる、近場でおもしろそうなスポットをご紹介します。
※本記事は、吉田友和:著『名古屋発 半日旅』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。
通称「タコの島」で汐風サイクリング
「ひまがじま」と打ったら変換できなくて「ひまかじま」と読むのだと知った。無知をさらけ出すようで恥ずかしいが、離島にはしばしば難読な地名が登場する。
実は地図で見て気になっていた。クワガタの角のような形をした愛知県の二つの半島のうち、知多半島側の先っぽ、三河湾の沖合いに位置する。
行き方は主に二通りあって、師崎(もろざき)港および河和(こうわ)港から高速船が出ている。近いのは師崎港で、片道約十分。ただし港までの移動がクルマ前提となるため、電車で行くなら河和港の方が便利だろう。こちらは片道約二十分。今回は師崎港から船に乗った。
船で島旅というと大げさな感じもするが、実際には拍子抜けするほど近い。なにせ、海の向こう側に島が望めるほどで、まるで渡し船のような感覚である。
日間賀島には港が二箇所あって、船は東港、西港に接岸していく。栄えているのは西港の方なので、観光客としては基本的には西港で降りることになる。
西港には、平屋の小綺麗な建物が立っており「ひまポ」という看板が出ていた。ひまポって何だろうか……と疑問に思ったが、なんてことはない。どうやら、英語訳の「HIMAKAJIMA PORT」を略す形で名付けた模様。
建物の中には切符売場があって、乗船客の待合室のようになっていた。観光用のチラシなども置かれていたので一通り物色し、とくに目を引かれたのが「きてみて! 日間賀島!!」と題した島内地図だった。
地図といっても、手書きの内容をコピーしたものである。ものすごくザックリした地図で、これだけだと場所を特定するのは不可能なレベルだが、各名所の説明書きと共にちょっとしたイラストが添えられていたりして、なかなか味があっていい。どうやらこれは島の中学生が作ったものなのだという。
この地図によると、日間賀島の面積は約770平方メートル、人口は1872人(2018年時点)とのこと。大きさの割には人が多いなあと感じたが、調べてみると、離島としては日本一の人口密度を誇ると分かり腑に落ちた。
さっそく島内を散策する。西港に近い「いこい」という店で、自転車が借りられるというので行ってみることにした。もちろん、これもその中学生の地図から得た情報である。旅行のときはなるべく予習をしない主義で、着いてからこういうローカルな情報ツールを活用するのが我が旅のセオリーなのだ。
レンタサイクルは1時間で550円だと言う。観光地で自転車を借りるのに1時間単位というのは珍しい。さらには、1時間の料金にしてはやや高い印象も受けたが「20分もあれば一周できますよ」と言われて納得した。
つまり、自転車で島を巡るなら、1時間もあれば十分ということだ。ちなみに歩いたとしても、一周するのに1時間ぐらいだという。やはり、それほど大きな島ではないらしい。
とくに理由はないが、なんとなく時計の反対回りで出発する。潮風を浴びながら、ペダルをきこきこ漕ぐのは心地いい。普段は保育園の送迎に子どもが乗せられる大きな電動自転車に乗っているので、非電動タイプのママチャリでゆるゆる走るのが新鮮だ。