食、建物、モニュメント…島中タコだらけ!

5分も走ると、この島の名物が何であるかが理解できた。それをモチーフとしたあれこれが、あちこちに登場するからだ。

何かというと――タコである。日間賀島はタコの島として有名なのだ。

▲タコ好きにはたまらない? 写真映えしそうな被写体が島のあちこちに

たとえば、港の外れに立つ駐在所がタコの形をしていた。ユニークな見た目はつい写真に撮りたくなるほどで、同じ船に乗ってきた観光客は、みなここでカメラやスマホを向けていた。ほかにもタコの絵や、モニュメントなど島じゅうタコだらけだ。

▲タコのような外観をした可愛らしい建物はなんと駐在所。これは日本一ヘンテコな駐在所かもしれない。

日間賀島の秋の風物詩といえるのが軒先で風に揺られる干だこ。「引っぱりだこ」という言葉があるが、その語源になったともいわれている。実は密かにこの風景が見たかったのだが、訪れた11月初旬の時点ではすでに終わった後のようで、探し回ったがひとつも見られなかった。

タコのほかにもフグも名産のひとつ。タコとフグにかけて「多幸の島」「福の島」などと呼んだりもするそうで、なるほど上手いこと考えたものだと感心させられる。

ともあれ、ぐるりと島を巡ってみると、漁業が盛んな島であることが改めてわかる。島の北側は漁港になっているのだが、おびただしい数の漁船が停泊していた。その数なんと450隻にも及ぶと聞いて驚いた。約2千人という島の人口と比べると、いかに漁船が多いかが分かるはずだ。

▲西港周辺の食堂でランチタイム。日間賀島まで来たのなら、やはり本場のタコを味わいたいところだ

とはいえまあ、漁業中心なのは離島ならばそう珍しいことでもない。もうひとつ日間賀島が注目されている理由がある。

「インスタ映えするスポットもたくさん!」

これは例の中学生が作った地図に書かれていた文言だ。そう、近年流行りの「映え」でも売り出し中の島なのである。

一番の見どころとされるのが「恋人ブランコ」だ。場所は島の東側、海を見渡せる高台の上。大きな木の枝にロープを結び、ブランコを設けている。

せっかくなのでついでに一目見ようと立ち寄ったら、見事に若い女性二人組の先客がいたので、いい歳したおじさんとしては邪魔者になりそうなので素早く退散した。海抜けの絶景を前にしてブランコを漕ぐのは気持ちよさそうだが、ブランコがあるスペースはそれほど広くないため、順番待ちするのもなんだか感じが悪い。

というより、そもそも場違いな雰囲気だ。乗りながら好きな人の名前を叫ぶと恋人になれるのだとか。もちろん年齢制限などはないが、ここは自粛するのが賢明だろう。

別に水を差すつもりはないが、近頃日本全国で同じようなブランコが大増殖中である。それゆえ「ああ、またブランコか……」という感想を持ったのも正直なところなのだが、それが人が集まるきっかけになるのなら意義はあるのだろう。

ほかに気になったスポットとしては「タイルロード」と名付けられた道。海沿いの岩壁に、大きなタイル絵が何枚も並んでいる。それらは島の小学生による卒業制作で、作られた年度が記載されているので、見比べるのもなかなか楽しい。

▲島にはビーチもあって南国気分に浸れる。夏には多くの人々で賑わうという。ブランコも浜辺の近くだ

いわゆる観光名所ではないものの、こういう島のローカルな部分に触れられるスポットというのは、個人的にとても心に刺さるものがある。

もし自分がこの島に生まれていたとしたら、一体どんな人生を歩んだのだろうか――ついそんなことを想像してしまうのは歳のせいだろうか。

中学生が作った地図に導かれ、小学生が描いた絵に心を揺さぶられる島旅となった。そういえば、高校はあるのだろうかと疑問が生じたが、日間賀島には高校は存在せず、中学を卒業したあとは船で本土の高校へ通学するのだという。

実は検索したら、そんな高校生活を綴った作文がヒットしたのだ。これがまた想像をかき立てる内容で、読んでいるうちに感情移入してしまった。悪天候で船が欠航したら大変だろうなあ、部活とかどうするんだろう……などなど、とりとめのない思考が頭をよぎる。

沖縄などは、こういう本土に比較的近くて、それなりに人が住んでいる島ならば橋をかけて繋げたりする。仮に日間賀島が知多半島と陸続きになったとしたら、きっと生活が一変するのだろうなあ。無責任な観光客としては、そんな風に好き勝手に想像をめぐらせるひとときにもまた旅の醍醐味を感じるのだった。

▲あいにく写真が撮れなかったので、貼られていたポスターを。海へ向かって漕ぐのは気持ち良さそうだ
<日間賀島>
住所:愛知県知多郡南知多町
アクセス:名鉄河和駅から徒歩7分(河和港乗船センター)→河和港から名鉄観光船(高速船)で20分
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日間賀島観光ナビ:https://www.himaka.net/