愛くるしく、時に甘え、時に素っ気ないツンデレ気質がたまらない"ネコ"という生き物。従順ではないけれど、触れ合うことで日常の一服の清涼剤となる存在ですよね。そんなネコには、今でも野生の頃の習性が残っているんです。飼い主たちがあまり知らないネコたちの"変なクセ"を、猫専門医・服部幸氏にお教えてもらいました。

※本記事は、服部幸:著『もっと! ネコにウケる』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

高いところに「見張り場」があると落ち着く

ネコが、いつの間にか本棚や食器棚の上に登って、あなたを見下ろしていることはありませんか? しかも、妙に落ち着いた満足げな表情をして。

高いところに登るのが好きというのも、ネコ特有の習性の一つで、これも単独で狩りをしていたことの名残といわれています。

野生では、木の上に登ることで外敵から身を守り、しばし安息の時間を持つことができました。また木の上に身を隠しながら、鳥が枝に止まるのを待ったり、地上に獲物が来るのを見張る、といった行動もしたようです。

野良ネコを見ていると分かりますが、ネコは木登りがけっこう得意で、屋根の上や塀の上などの高いところで、のんびり過ごしてることも多いです。高いところは安全な見張り台であり、ネコにとって優越感をもたらす場所でもあるようです。

ネコ同士のけんかの際には、より高い位置に陣取ったほうが優位になる、といわれています。

強いネコは高い場所から見下ろして威嚇し、弱いネコは一段低いところでさらに体を低くして、最後には寝転がってお腹を見せて「降参」のポーズを取ったりします。

これが同じくらいの強さのネコ同士だと、形勢不利だったネコが高いところへ移動すると、たちまち優劣が逆転するということも起こるようです。

こうした習性を利用して、高いところに安全な居場所を確保してあげると、ネコのお気に入りの場所になると思います。

ときどき登っている本棚や食器棚があれば、落下してしまうと危険なものを片付け、ゆったり体が収まるスペースを作ってあげましょう。キャットタワーや、もし可能であればキャットウォークと呼ばれる高い位置の通路(梁)を設置するのも、おすすめです。

だれにも邪魔されない「見張り場」から、好きな飼い主さんをいつでも眺めていられるのは、ネコもきっと気分がいいはずですよ。

▲高いところに「見張り場」があると落ち着く イメージ:PIXTA

いつでも潜り込める「隠れ家」があるとうれしい

高いところのほかに、ネコが好む場所は「穴ぐら」や「狭いすき間」など、体がすっぽり収まるくらいのスペースです。

ダンボールの空き箱・紙袋・家具と家具の間など、なぜわざわざそんな狭いところに、と思うような場所が好きなのです。靴の入っていた紙箱や、土鍋にすっぽり体を丸めて入るのが好きなネコもいますね。

ネコと暮らしていると、たまに、どこを探しても姿が見えないことがあります。そういうときは、たいていそんな狭い薄暗い場所で居眠りしていることが多いのです。つまり、狭い穴ぐらのような場所は、ネコにとって安心できる場所なのです。

これも野生のときの名残で、周りが囲まれていて、外敵に発見されたり襲われたりする心配の少ない穴ぐら的なスペースは、安心して休息できる場所だというのを知っているんですね。

狭苦しい場所に潜り込むクセは、見ていて微笑ましくも感じますが、外敵に襲われる心配がない平和な飼いネコ生活に浸っていても、こうした身を守る習性を忘れないのは、ネコがずっと野生の本能を残していることの証しでもあります。

▲いつでも潜り込める「隠れ家」があるとうれしい イメージ:PIXTA

すでに何度かふれていますが、ネコ特有の習性というのは、ほとんどが野生における狩猟動物の本能からきています。

ネコを喜ばせて、ともに楽しく暮らすには、こうした本能を刺激してあげたり、本能の欲求を満足させてあげることがコツです。家の中にも穴ぐら的な場所を作ってやり、好きなときに潜り込める「隠れ家」として利用してもらいましょう。

穴ぐらやトンネル風に使えるペットグッズも市販されていますが、ダンボール箱に入り口だけ作って廊下の隅に置いたり、クローゼットの奥にキャリーケースのふたを開けて置いておくのもいいかもしれません。

急な来客やにぎやかな雰囲気が苦手なネコは、パーティーなどで人の出入りが多いときに、そんな場所に逃げ込んでホッとしてくれることと思います。