イタリア人はシブいオジサンが多い、フランス人は美食家だらけ、など――。各国の国民性に対するイメージは、日本人であれば、おおよそ統一されているのではないでしょうか。しかし、元国連職員でイギリス在住の谷本真由美氏によると、イギリス人は「ガチのヤンキー」、イタリア人は「子ども部屋おじさん」と、実際のところはイメージとかけ離れていることが多いようです。

※本記事は、谷本真由美:​著『世界のニュースを日本人は何も知らない 2』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

「ガチのヤンキー大国」になってきているイギリス

もしかしたら、あなたは「イギリスは紳士淑女だらけで、あちこちにベネディクト・ カンバーバッチのようなジェントルマンがいる」というイメージを持っていませんか? 

これは、とんでもない勘違いです。

イギリスに初めて来た人の第一印象は、おそらく「ここは昔の横浜か? それとも千葉の外房か?」という感じでしょう。

どういうことかというと、下記のような感じの人が街のいたるところにいるからです。 

  • 頭がプリン(染色が落ちて、頭髪が二色に分かれていること) 
  • 一年中スウェットを着ている
  • 髪型がツーブロック
  • 首元に巨大な金のネックレス
  • 眉毛を剃っている
  • すごい改造車に乗っている
  • 車の中にはピンクの毛皮が飾ってある
  • 刺青だらけ
  • 日焼けサロンでガンガンに焼いている
  • 肥満度が高い
  • パチもんのブランド品を身につけている(特にヴィトンとバーバリー)
  • 近所に無数の質屋がある
  • 一年中ギャンブルをやっている
  • 一年中揚げ物を食べている
  • 一年中宝くじを買っている

おわかりになりましたでしょうか。要するにイギリス人の大半は、日本人が想像するヤンキーどころではなく、ガチで本物のヤンキーなのです。イギリスの言葉では、こうした人を「Chav(チャブ)」と呼びます。

▲「イギリス=紳士の国」というイメージはもはや崩壊!? イメージ:PIXTA

彼らはここ30年ぐらいの間に登場した人々で、かつてのイギリスであれば伝統的な労働者階級と呼ばれたわけですが、現在では工場や鉄工所で働いている人はあまりおらず、サービス業に従事しているか無職です。

現在のイギリスの消費や文化を支配するのが彼らであり、はっきり言って、国をあげてヤンキー化が進んでいます。彼らの消費パターンは、伝統的なイギリスのイメージと正反対のものです。

まず、彼らは「今」を大事にするので、宵越しのお金は持ちません。現金が入るとすぐに使ってしまいますが、お金の使い道は、ブランド品や服、車用品、それからギャンブルです。もちろんタバコとアルコールは必須です。アルコールはカクテルや激安のビールをガンガン飲みます。冗談ではなく、バケツにいれて一気飲みすることもあるのです。

暖かいところが大好きで、スペインやギリシャなどに出かけていってはビーチで肌を焼き、一日中お酒を飲みます。ビーチで聴く音楽はヒップホップやラップ、テクノです。ビートルズを知っている人はあまり多くありません。

イタリアは「子ども部屋おじさん&おばさん」だらけ

「欧州や北米の若者」と聞くと「早くに独立し、親とは距離をとる」というイメージを持つかもしれません。実は、そういった若者はそれほど多くありません。

彼らはもともと親との距離が近く、親の家と同じ敷地内にある小屋に住み続けたり、親戚と固まって住んだりすることも多いのです。

特に、イタリアやスペイン、ギリシャ、フランス南部といった地域は、日本人がイメージする欧州とは大違いで、家族や親戚は常に距離が近く、いつもベタベタしています。子どもが親から独立しても、親の家の近くに住居を設けて毎週のように行き来しているのは当たり前のことです。

そのため、これらの国々では「子ども部屋おじさん」「子ども部屋おばさん」も少なくありません。

特に多いのはイタリアです。イタリア人は基本的に実家が大好きですし、親も子どもを溺愛するので、大きくなっても実家に住んでいる人が結構います。

ところが、こうした状況が新型コロナで裏目に出てしまいました。なぜイタリアで感染が大爆発したのか?

ドイツの経済学者が、ネットワーク理論の視点で分析したところ「子ども部屋おじさん」や「子ども部屋おばさん」の多さが原因だった、ということを突き止めたのです。

イタリアでは、30〜49歳の子どもが高齢の親と同居しているケースが多く、子どもが外からウイルスを持ち込み、家族間で感染させてしまった例が相次ぎました。

新型コロナで親戚の様子を見に出かけたり、普段にも増して親の世話をよくしたり、そういう人も多かったでしょうが、家族のつながりが濃厚なほど感染が爆発する、という皮肉なことになってしまったのです。