海が生まれた3つのシナリオ
では、いったい地球の水はどこからきたのでしょうか。判然とはしませんが、現在考えられている3つの水の起源を紹介しましょう。
- 水は元来、地球を形成した微惑星に含まれていた。超高速で原始地球に衝突した微惑星が蒸発して水蒸気になり、二酸化炭素などとともに原始の大気となった。やがて微惑星衝突の頻度が減ると、地表は冷え始め、やがて地殻ができ、水蒸気は凝結して雨となって降り注ぎ、海になった。
- 原始地球が大きく成長したとき、原始太陽系円盤にはまだ水素ガスが豊富にあった。そこから取りこんだ水素ガスが、マグマオーシャンに含まれていた酸素と結合して水ができた。
- 地球が大きく成長したあとで、水を含んだ彗星のような小天体が地球に落下し、地球の外から直接的に水が供給された。海の水の質量は、地球全体の質量の0.0023%にすぎない。水を含む小天体が地球に落下すれば、海の水を供給するには十分のはずだ。
近年、ハーシェル宇宙望遠鏡でハートレー彗星のコマ〔核から噴き出したガスが核を包み込んで明るく輝いている部分〕を観測したところ、“コマの水”の水素同位体比が、“地球の海”の値と非常に近いことがわかっています。
ハートレー彗星は、エッジワースカイパーベルト(軌道長半径が海王星以遠の小惑星帯)からやってきた彗星だと考えられています。このことから、エッジワースカイパーベルトを起源とする彗星の水が、地球にもたらされたと考えることができます。しかし、地球の水の起源は、3番目の説だけではなく、前出した説の組み合わせによってもたらされた、と考えるのが妥当と思われます。