今、あなたが直面している悩みを思い浮かべてみてください。人間関係・仕事・お金・健康・未来……。どんな人の人生にも、問題・課題・難所が待ち受けています。しかし多くの人は、悩みを抱えたとき「今までの経験に基づいて判断する」「勘や直観に頼って答えを出す」ということをやってしまいます。これでは“一番いい答え”を導き出すことはできません。では、一体どうすればいいのでしょうか? 論理競技王者・太田龍樹氏が「最適解」の出し方を伝授します。

※本記事は、太田龍樹:著『一番いい答え- 絶対後悔しない最適解の見つけ方 -』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

「最適解」が見つかるトゥールミンモデル

一番いい答えを出すには、明確なメカニズムが存在します。それが「トゥールミンモデル」というシンプルな思考の型です。イギリスの哲学者で教育者のスティーヴン・トゥールミンが考え出しました。

一番いい答えとは「最適解」のことです。大人・社会人の世界には、学生時代のテストのように「〇か×か」という、わかりやすい答えがありません。

そこで、より“メリットがあり”“論理的である”答えを見つけ出すしかありません。決断に後悔しないためには「現実的で最も効果のある答え」を導き出す必要があるのです。

私は、論理競技であるディベートの選手(ディベーター)として、大会やテレビでディベートの試合を繰り広げてきました。ディベートマニアという大会で6連覇を果たしています。

そのディベーター経験に基づき、ディベートの指導者として17年間、大学生からビジネスパーソンまで、のべ1万人に「トゥールミンモデル」を指導してきました。論理思考の書籍を執筆して世に問い、テレビやインターネットでディベートの番組に出演したり、企画をしてきました。31年にわたってディベートのさまざまなシーンを経験してきたのです。

ディベートとは、あるテーマに関して異なる意見を持った人たちが、見ている観客を説得するように議論する競技です。ディベートという代物は「トゥールミンモデル」そのものだと言えます。ディベートでやり取りする議論は「トゥールミンモデル」に基づいてつくらねばならないからです。

悩みや問題を抱えたときには、最適解が見つかるトゥールミンモデルの型に、自分の「ぼんやりした考え」や「持っている情報」を当てはめることで解決できます。

「クレイム」「データ」「ワラント」の三角ロジック

トゥールミンモデルは基本的に3要素で成り立ちます。公式は次の通りです。

最適解=「自分の主張(クレイム)」+「事実・証拠(データ)」+「主張と証拠をつなげる理由(ワラント)」

これら3つのなかに、自分の持つ「考え」や「情報」を当てはめることで、自動的にあなたの考えは、現状で最も「メリットがあり、論理的な答え」になります。

▲『一番いい答え』(小社刊)より

データはもちろん、ワラントが欠けてしまうと、そのクレイムは成立せず、最適解ではないと言えます。逆に言えば、クレイムを支える、データとワラントがあれば、それはあなたに合った最適解だと言えます。

わかりやすい例で、トゥールミンモデルを解説します。

クレイム(主張・結論):「Aさんは、虫歯になるだろう」
データ(事実):「Aさんは、食後に必ず甘いものを食べているから」

Aさんの友達のBさんは、甘いものが大好きで食後にデザートなどを食べてしまうAさんについて「虫歯になるだろう」と思っています。では、このクレイムとデータとの間に隠れている「隠れた理由=ワラント」はなんでしょうか。

ワラント(論拠)は「虫歯になるのは、虫歯菌が糖分をエサにするため、虫歯菌の増殖をまねくから」となります。

このように「クレイム(主張・結論)」「データ(事実)」「ワラント(論拠)」が結ばれた三角ロジックが「トゥールミンモデル」です。