IWGPヘビー級王者

僕が初めてIWGPヘビー級王者となった2006年当時は、プロレスが総合格闘技などの人気に押されていたことや、観る側の期待を裏切る対戦カードなど、さまざまな要因でファンが新日本への不信感を募らせ、会社がピンチに陥っていた。それは焼け野原といっていい状態で、会場には閑古鳥が鳴き、試合もまったく盛り上がらない。業績を上げたいと思っても、どこから手を付けて良いのかわからない状況だった。

そこでまず、僕は「どうしたらプロレスを好きになってもらえるか?」を必死に考えた。しかし、解決策はなかなか見つからない。

行き着いた先は「そもそも自分はどうやってプロレスを好きになったのか?」という根本的な問いだった。

「好きになったのは、プロレスを観たから。そうか! まずは観てもらえばいいのか!」──その答えはとてもシンプルである。

当時はプロレスを観たことがない人が多く、とくに若い人たちは目にする機会も少なかった。好きになってもらうチャンスすらなかったのだ。

しかし、「プロレスを観に行きたい!」となるには、いくつものハードルがあった。ゼロから、いや、むしろマイナスからのスタート。全国で大会のプロモーションをこなしながら、それを痛感した。

メディアの取材を受け、ラジオに出演させてもらっても、プロレスどころか自分の名前を覚えてもらうこと自体が難しいのだ。よく芸人さんが漫才を始める前に「名前だけでも覚えて帰ってください」と言うが、あれはただの前口上ではなく、心からの言葉なんだと思った。

そこを越えたら、次にプロレスに興味を持ってもらい、さらに会場で観てみたいと思わせたいところだが、大きな難敵が現れた。

ズバリ〝先入観〟である。