「権力」「象徴」の安定した正統性
日本の皇室は男系男子で、万世一系で継承されてきた。しかし、ここへきて、皇族の若い男性は秋篠宮悠仁親王だけになってしまい、なんとも心許ないことになっている。この連載では、古代史を中心に論じてきたが、今回は現代の皇位継承について論じようと思う。
「君主制」というのが、どういうメリットがあるかというと、権力ないし象徴としての国家元首の正統性が「血筋」という視点から容易に裏付けられるからだ。民主主義は選挙による国民の意思が正統性の源だが、不安定であり、君主制の安定性は優れものだといえよう。
その正統性は、歴史的に決められたルールによって継承されると言うことだ。従って、それを変更するためには、従来の原則を変えざるを得ないという事情がないと、簒奪(さんだつ)者として扱われる可能性があり危険である。
たとえば、自分の子孫に継がせたいが故に、女性や女系を認めるといったことは、多くの国において内乱や戦争の原因になってきた。
さて、日本の皇室における皇位継承の歴史的原則は「男系」である。ただし、欧州では嫡出に限定されているのに対して、日本では制限されていない。また、高貴な母親の子が有利である。女性天皇の前例はあるが、独身か皇族の未亡人であり、つなぎと位置づけられる。
古代にあっては、即位はだいたい30歳以上が通常であり、終身であったが、飛鳥時代の皇極(こうぎょく)天皇からは生前退位が一般化した。
これからの皇位継承問題について
近代の皇室は、古代に戻るという建前が取られたが、実質的には欧州の王室制度に倣って制度改正が行われ、生前の退位はなくなった。しかし、欧州でも超長寿化に伴い生前退位がしばしば行われるようになり、日本でも平成の陛下が85歳で退位された。
現在の皇室典範に定められている通りに皇位が継承され、かりに平成の陛下のように85歳くらいまで在位されると仮定すると、令和の陛下が85歳になって退位されるのが2046年、そのあとを秋篠宮皇嗣殿下が5年間在位されたとすると2051年まで、悠仁さまが85歳になられるのは、2091年である。
したがって、もし、悠仁さまに男子がない場合でも、問題になるのは今から70年後の皇位継承なのである。
こうした、皇位継承者の不足は、秋篠宮殿下の誕生ののち、9人連続して女性の宮様の誕生が続いたことによる。確率としては512分の1しか起きないことが起きたわけだが、これは偶然でなく、おそらく近親結婚の多さなどに起因する可能性もある。
昭和22年に皇室の簡素化を図るために、11宮家を皇籍離脱させ、大正天皇の男系子孫である3つの宮家のみを残したのであるが、大正天皇の孫世代には5人の親王があり、安泰であるように見えたのだが、この9人連続での内親王や女王の誕生でにわかに緊迫している。
もし、悠仁親王に男子ができたなら、さしあたっての危機は回避されるが、いずれにせよ心許ない。そこで、解決方法は3つある。
- 悠仁さまに男子がなければ、旧宮家を復帰させる
- 悠仁さまの娘、ないし、現女性皇族の女系子孫を充てる
- 悠仁さまを廃嫡し、愛子さまを女帝とし、その子孫に継承させる
このうち3.はかなりドラスティックなので、少なくとも自民党内ではあまり支持者がいない。2.については、もし悠仁さまに内親王もいなければ、その場合の第一候補は、眞子内親王の子孫ということになり、小室圭氏と結婚した場合には、その子孫が皇位を継承することになり、心配は絶えない。
1.については「国民になじみがない」のが難点とされるが、もし、この案をとるとすれば、悠仁様と同世代の旧宮家の誰かを皇族とし、その子どもの世代が天皇になる可能性が出るわけで、生まれながらの皇族ということになり、即位時点では問題がないと考えられる。また、旧宮家のうち4家は明治天皇の女系子孫であり、東久邇宮家は昭和天皇の女性子孫である。
しばしば、愛子さま・眞子さま・佳子さまの子孫を継承者とすれば安泰である、という意見もあるが、悠仁さまも含めた4人の子孫が永続するということにならない可能性はそれほど小さいものでない。こうした議論の場合、どうしても、その時々の帝王を出発点に考えがちだが、2091年にそれが妥当とも思えない。
また、旧宮家の男系子孫にしても同様である。諸外国では、非常に多い人数の潜在候補者を抱えており、英国王室の場合、近年、制度改正をしたので不明点もあるが、数千人の有資格者がいる。日本も少なくとも数十人以上の準備はするべきかと思う。