引退後も影響を及ぼす「プレッシャーの力」

エディーさんの「プレッシャーの力」は、現役を退いた今も僕に影響を及ぼしている。大学院への進学、コーチ就任、『ノーサイド・ゲーム』への出演、経営者への転身。何かを「成し遂げたい」とか「今までやったことのないことに挑戦したい」というときは、それを乗り越えられたときに、必ず大きなものが得られるということを僕は知っている。たとえ、とてもハードな道を歩むことになるとわかっていても。

正直なところ、ちょっと楽をしようと思っても、それなりに生きていけるだろうとは思う。だけど、まだそんなフェーズではないと、自分自身にプレッシャーをかけ続けて毎日を生きているところがある。

「プレッシャー」という言葉に対しては、ネガティブな印象、マイナスのイメージを持っていた人もいるだろう。だけど、プレッシャーをかけられつつ、もがきながら進むことで、新たなフェーズに進めることもわかってもらえるはずだ。これはラグビーに限った話ではない。さまざまなスポーツの指導者や、有効なコーチングを身につけたいというビジネスパーソンにも役立つだろうと思う。

エディーさんは僕よりずっと年上だけど、常に学び続けているし、新しいことに挑んでいる。その姿勢は素晴らしいと思うし、見習いたい。

僕とエディーさんは今でもときどき、連絡を取り合っている。僕にとっては古い友人であり、師でもある。現役当時はエディーさんから相当なプレッシャーをかけられて、心身共にキツい思いをした。だから「もう一度、一緒に仕事をしよう」と言われたら、そこは相当な覚悟が必要になる(笑)。でもいつかまた、お酒でも酌み交わしながらラグビー談義に話を咲かせられれば嬉しい。

※本記事はエディー・ジョーンズ:著『プレッシャーの力』(ワニブックス:刊)より一部抜粋編集したものです。

プロフィール
 
廣瀬 俊朗(ひろせ としあき)
​1981年、大阪府生まれ。ラグビー元日本代表。スクラムユニゾン発起人。5歳のときにラグビーを始め、北野高校、慶應義塾大学を経て、2004年に東芝入社。1999年度、U19日本代表、高校日本代表、2007年より日本代表。2012年から2013年まで日本代表のキャプテンを務める。2015年W杯では日本代表史上初の同大会3勝に貢献。通算キャップ28。ポジションはスタンドオフ、ウイング。