エディージャパンが大切にしていたこと

代表合宿の初めのころは、次に何をするのか、具体的な情報を何も知らされないまま練習に臨むこともあった。そうすると、僕らは目の前の練習に全力を尽くすしかなくなる。練習メニューを事前に提示すると、体力を温存したりペースをコントロールしてしまう、日本人の悪いクセを見抜いてのことだった。

そして、自分はなんのためにラグビーをやっているのか。何がなんでも勝ちにこだわっているのか。練習のための練習になっていないか。エディーさんは徹底的に詰めていった。チームミーティングでは「イエスかノーかはっきりしろ」「グレーな表現でごまかして、あとで愚痴を言うのはやめろ」とも言われた。

そんなエディージャパンで、僕がキャプテンとして心を砕いていたこと。それは“ジャパン・ウェイ”と呼ばれる、日本チーム独自の戦い方が徹底できるようなベース作りだ。そのために、言動を常に一致させ、常にハードワークした。そうあるよう自分にプレッシャーをかけていたのだ。

こうしたエディーさんのプレッシャーのもとで、代表メンバーは世界で勝ちを重ねるために、何をすべきか学んでいくことができた。それに練習があまりにもタフだったので、試合で相手のプレーに驚くことがなくなった。これもチームが成長した要因の一つだと思う。

良い練習によって、試合でも優れたパフォーマンスができるようになると、僕らはやれるんだという自信がでてくる。プライドを持って戦えるようになる。すると、今度はそれが相手チームへのプレッシャーになった。これは大きかった。

オーラと言っていいだろうか。僕はエディージャパンでも、所属していたチームの東芝でもチームがまとうオーラを大事にした。選手一人一人が堂々として、強く、結束していると、その雰囲気は必ず相手チームにも伝わる。逆に言えば、このチームはメンバーの仲が悪くチグハグしているなというのもわかってしまう。

だから、相手チームの選手たちに「このチームはなんてタフなんだ」とか「ちょっとでも油断したら、攻めこまれる」というプレッシャーを与えれば、相手を怯ませることができるし、そこから崩していくことができる。

もちろん2015年の南アフリカ戦の場合は、相手が“ジャパン・ウェイ”のラグビーに慣れていないというのも大きかっただろうし、こちらは挑戦者、相手チームは日本に勝って当たり前という立場の違いという大前提もあった。

しかし、なによりこちらはフィットネスは世界一、スキルも世界一で、メンバーが有機的に動くチームの連動性でも負けないという自負があった。これだけの猛練習をしたんだという思いもあったし、練習をサボった日は1日たりともないという思いがあった。ここまでやったんだから、あとは力を発揮するだけだという気持ちで戦え、勝利をつかむことができた。