「痛み」というストレスが寿命を短くしてしまう

▲「痛み」というストレスが寿命を短くしてしまう イメージ:PIXTA

今までの“長引く痛み”の診療で一番の問題だったのは「あなたはこうだから痛いのですよ、でもいついつには痛みが取れますよ」とか「今から痛みの原因を取り除きますね」ということを医療者が言えないことにあるのです。

原因が特定していないので断言できません。ですから患者さんには「いつになったら痛みが取れるのかしら」という疑問が残されます。それを答えてくれる人がいない。これが一番の問題なのです。 

「痛くたって死にゃしないよ、お前!」なんて、ドラマかなにかで出てきそうなセリフですね。お医者さんでも昔は、頻繁に使っていたフレーズかもしれません。

しかしこの言葉、最近は病院で耳にすることは少なくなりました。その理由のひとつには、医療者が患者さんに横柄な態度を取らないように心がけていることが背景にあるのかもしれませんが、もうひとつ全く別の理由があります。

実は“長引く痛み”は、寿命を短くしてしまう可能性があることがわかってきたのです。

どうして“長引く痛み”があると寿命が短くなったり、がんや心臓病になりやすくなったりするのでしょうか。

一説には、精神的なストレスが増えることや気分の落ち込みが原因ではないかとされています。

痛みがあるということ自体が、私たちにとって非常にストレスとなります。特に“長引く痛み”には「いつ治るかわからない」という性質があります。とてつもなく強い痛みが1日だけあるのと、中程度の痛みが「いつまで続くかわからない」というのとでは、わけが違います。後者のほうが精神的な負担が大きいのは容易に想像できると思います。

実際に、2010年のインターネットでのアンケート研究で、“長引く痛み”を持つ人(5998名)のうち76.7%の人が「痛みを感じているときは、やる気がなくなる」と答えています。また「痛みのせいでイライラしたり、うんざりしたり、ストレスを感じている」という人が66.1%いました。

“長引く痛み”のほかに、発がんの原因として大きな位置を占めているのが、運動不足です。運動不足を甘く見てはいけません。喫煙や飲酒の影響はもちろん大きいですが、野菜不足と比べても、運動不足は発がん原因になりやすいことがわかります。

“長引く痛み”があれば、痛みで体を動かす気にならず、運動量が落ちることは想像に難くありません。そのようなことも原因として考えられてるのです。