「歌だけで60分」と「愛来の涙」が証明したこと

▲三部構成というハードなライブでありながら圧巻のステージを見せてくれた

だいたい3曲から4曲、長くても5曲を上限にワンブロックをつくり、合間にMCコーナーを入れながら作っていくのがライブの定石。体力的にも、おそらく、これが理想形なのだろうし、そうすることで各ブロックの色合いや意味合いがハッキリしてくるから、全体のメリハリもできる。なんといっても、ファンもMCコーナーから垣間見える推しメンの素の表情を見るのが、ライブ参戦の楽しみのひとつとなっているはず。

ただ、コロナ禍でステージと客席のコミュニケーションが直接とれなくなってしまった。それを受けて、アメフラっシのライブではさまざまな試みがなされてきたが、ついにMCコーナーをすべてなくして「歌だけで60分」という究極のチャレンジを、1年の締めに持ってきたことになる。

もちろん水を飲むために一瞬、ステージ上が暗転することはあるし、3人だけで歌う楽曲では、参加しないメンバーはそのあいだだけステージを離れることができる(ただし、市川優月はすべての楽曲に参加しているので、正真正銘の60分ノンストップ!)。とはいえ、ここまでの「がっつり」はなかなかできるものではない。何度も書くが、この日は三回公演で、ここに至るまでもさまざまなことをやってきているのだ、4人は。

この日のライブチケットは、あっというまに完売。残念ながら入手できなかった人たちのために、ニコニコ生放送にて第一部から生配信されていた。そのアーカイブ映像は2月28日までタイムシフト視聴することができるので、気になる方はぜひともチェックしていただきたい(Zepp Hanedaは延期になってしまったけれど、まさに最初の予定日だった2月28日にアメフラっシのライブを追体験することはできるのだ!)。

僕は当日、会場の最後列から見ていたので、のちにアーカイブ映像を見て、いろいろと気づかされることが多かった。そのなかでも、やっぱりグッときたのが愛来の涙、である。ちょうどライブの折り返し地点で『Over the rainbow』を歌っているときに、愛来が突然、声を詰まらせた。

最後列からでは表情まではハッキリと見えないので、泣いているのかどうかわからず、一瞬「体力が限界を迎えてしまったのではないか?」と心配になった。前述したようにメンバーが体力面での不安を口にしていたし、ここまで30分ノンストップでパフォーマンスしている時点で、もういつものライブよりもかなりハードな状況だったからだ。

それがアーカイブ映像を見ると感極まっていく感じ、そして頬をつたう涙がハッキリと確認できる。終演後に話を聞いたら「体力面はまったく問題なかったです」とケロッとしていたので、こちらが不安視していたような状況から、すでに彼女たちは一段上のステージに昇っているのかもしれない。

▲不安からくる涙ではなく、希望に満ちた愛来の涙をぜひチェックしてほしい