プロではないのに求められる「プロ意識」

もう10年以上前に『人は見た目が9割』という本がベストセラーとなりましたが、去年の夏、まさにその通りの体験をしたこともあります。

日没後とはいえ気温が30度を超えるなかで自転車をこいでいると、着ているものはすべて汗でビシャビシャになります。キンキンに冷やした保冷剤を首に当てたり、自販機で冷たい缶ジュースを買って脇にはさんでみたり、制汗スプレーを使ったりするのですが、流れる汗を止めることはできません。

▲真夏でも関係ない「人は見た目が9割」 イメージ:PIXTA

そんななか、リュックの中にホッケ定食を入れて向かったのは、下町エリアの5階建ての住宅。エレベーターがなかったので、えっちらおっちら階段を上って部屋の前に到着。「置き配」の指定ではなかったので、ドアの前に到着してから持っていたフェイスタオルで手と顔の汗を拭いてからインターホンを押すと、出てきたのは20代と思われる男性の方。

服が汗でびっしょりの私を見た瞬間、露骨に引いたような表情をしたかと思うと、奪うように商品を受け取り、急ぐようにしてドアを閉めました。しばらくしてからアプリを見ると、やはりプロ意識に問題があるとのご指摘が……。

どう配達すればいいのかと、嘆きたくなることもありますが、いまやアラフィフにも届きそうなオッサンの悩みなど、誰も聞きたくはないもの。BAD評価をくらっても、稼げる額は変わらないのだと自分に言い聞かせ、しかたなく配達を続けるしかないのが現状です。

さて、プロ意識に問題があると評価をするのは、注文者サイドだけではありません。飲食店側も、配達員に問題があるとBADの評価をすることがあります。

まだコロナが騒がれていなかった一昨年の秋のこと、ディナータイムに丸の内エリアのオフィスビルにある中華レストランへ向かいます。注文商品の確認画面を見ると、家族で食べるのか、エビチリ・八宝菜・回鍋肉、あんかけチャーハンなどなど、たくさんの料理を注文されていました。お店に到着して「こちらです」といって渡されたのは、たくさんの料理が雑に詰められた1つの大きな袋。

▲理不尽な「BAD評価」 イメージ:PIXTA

スーパーのお惣菜コーナーで使われているような大小さまざまな容器が、大きさやバランスをまったく考慮せずに袋に詰め込まれている、そんな状況でした。袋を持ち上げただけでも、中に入った容器が斜めになり、料理がこぼれそうだったので「こっちで詰め替えるから、小さな袋を4~5枚ください!」と言うと、面倒くさそうな顔をして店員さんはレジカウンターへ。袋を持ってくると私に手渡し、さっさとその場を去っていきました。

容器をサイズ別に分けて、運んでいる途中に倒れないようしっかりとしばり、リュックの中に詰めてから注文者の待つお宅へ。中身をこぼすことなく、無事に届けてからアプリの画面を見ると、お店からの「プロ意識の問題」というBAD評価がついていました。

ちなみに「プロ意識の問題」のBAD評価があると、配達員のアプリには「高い評価を受ける配達パートナーは、礼儀正しくプロフェッショナルな態度で、細部に気を配ることが必要です」といった内容のメッセージが表示されます。

この文面を読むたびに、自分はいったい何をやっているのだろう? と自暴自棄になりそうな毎日です……。プロの配達員になるには、まだまだ修行が足りませんね。

『アラフォーUber Eats配達員 激走日記』は、2/26(金)更新予定です。お楽しみに!!