はじめまして。Appleの未発表製品などの情報や、中国のネット事情などについて書いているブログ『小龍茶館』の“中の人”の小龍と申します。

私は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生国とされている中国に十数年住んでおります。新型肺炎発生地の武漢にも2017年まで住んでいましたが、現在は広東省中山市という、あの中国封建体制を倒して中華民国を打ち立てた、民主化の父と呼ばれる孫文の故郷に住んでおります(中山とは孫文の字〈あざな〉で、日本人の苗字からとられています)。

▲広東省の位置 出典:ウィキメディア・コモンズ

経済をはじめ何もかもがストップした中国

私の住んでいる中山市は、広東省の省都広州市とマカオの隣にある珠海市の間にあり、香港やマカオにも近いところですので、武漢からはかなり離れています。

そんなわけで、新型コロナ(当時は新型肺炎と呼ばれていました)は対岸の火事かと思っていたのですが、2020年の春節(旧正月)直前の1月20日に習近平国家主席が「重要指示」を出してから、全国的にマスクや消毒液などが手に入らなくなり、1月23日に武漢がロックダウン(封城)状態になり、そして1月25日に春節初日を迎えました。

その頃はまだ普通に春節を祝っている人たちもいましたが、紅白歌合戦のような番組『春節晩会』で、ロックダウンしている武漢の現状を映して応援する動画が用意されるなど、完全な祝賀ムードになれない感じがありました。

さらに2月7日に、湖北省全体がロックダウンされたころから、全国的にマンションや区域毎の封鎖管理が始まります。

マンションや日本でいう“丁目”単位で物理的に封鎖され、出入口が一カ所に規制され、そこで出入管理が行われ、体温測定が行われたほか、各都市や地方によって異なりますが、中山市では2〜3日に1家族につき1人が1回だけ、買い出し目的のみで外出可能という制限がかかりました。

私が住んでいるマンションでも、独自の通行証を発行するなどの対応をしていました。武漢や湖北省から年末あたりに移動してきた人に対しても、風当たりが強くなっていたのが印象的でした(湖北省ナンバーの自動車でさえ警戒されていたくらいです)。

私は2月12日〜19日の間、日本に一時帰国していたのですが、そのころは中山市でも封鎖管理が始まっていました。しかし、なぜかうちのマンションは、自動車での出入りは比較的に緩く、またフェリーで香港にも行けたうえに日本行きの航空便も、そこまで減っていませんでした。

しかし私が帰ってきた後くらいになると、海外にいる外国人に対する中国のビザでは、基本的に入国不可能となって政府の招聘状が必要となり、もし入国できたとしても一律14日の強制隔離が始まりました。さらに香港やマカオなどもボーダーや国境を封鎖し、3月頭くらいまで皆ほとんど外出ができない状態が続きました。

たまに買い出しのため外に出ると、いつもは車通りの多い道に全く車が走っておらず、もちろん人も少ないゴーストタウン、まるで『北斗の拳』の世界のようになっていたのを思い出します。あれは本当に目に焼きつく異様な光景でした。

▲車一台通らず、ゴーストタウンとなった広東省中山市の様子

そんな街で商売ができていたのは、食料品市場・薬局・配達専門の飲食業くらいで、他は旧正月明けの開業に許可が必要な状態でした。そんなわけで、市場以外に何も営業していない街に外出しようと思う人も少なかったのだと思います。そして中国の経済はいったんストップしたのです。

ただ、幸いなことに旧正月休暇があって、もともとお休みだったので、そこは少し中国にとっては助かったというのもありますが、その時期に中国の人たちは里帰りをするので、民族大移動が起きて、新型コロナが武漢や湖北省から中国のみならず世界中に広がってしまったということもあるかと思います。