中澤佑二は頼りになるし頼られたい存在だった
平畠 在籍している横浜FCには、若い選手が多いじゃないですか。今はコロナ禍なので難しいでしょうけど、ご飯に連れて行ってくださいと言われることはあるんですか?
中村 僕には言えないんじゃないですかね。ちょっとピリピリしてますし、怖いっていう印象を持たれている気がします(笑)。ジュビロにいたときは、名波さんから「一緒にメシ行ってやってよ。お前が話してくれるだけで全然変わるから」って言われたこともあって一緒に行っていましたけどね。
平畠 そういう関係を築かないのは、何か理由があるんですか?
中村 “なあなあ”になりたくないというのは、あるかもしれないですね。たとえメシに行ったとしても、試合中の絆は生まれない。僕、ボンバー(中澤佑二)とは一度もメシに行ったことはないですけど、戦友だと思っています。
頼りになるし、自分もボンバーから頼られる存在でいたいとも思っていました。電話番号も知らないですしね……あ、でも年賀状はくれますよ。
平畠 いいですね(笑)。日本のお客さんって、チームに仲のよさを求めるところがあるじゃないですか。けど、大事なのは、勝つための関係性を試合のなかで築くということですね。
中村 人それぞれだと思いますけど、僕はそういうところを大事にしています。今はコロナもあって難しいですけど、もちろん若い選手とご飯に行くことはありますし、グラウンドでは若い選手に「今日の練習はどうだった?」って聞いたり、プライベートの話をすることもあります。
ただ日本の場合、馴れ馴れしい感じがグラウンドで出てしまうところがあるので、あまりしないようにはしていますね。
平畠 用語についても伺いたいのですが、日本だと例えばインサイドパスとかトップ下とか、いろんな用語が使われていますよね。イタリアやスペインで、日本と同じ用語を使っているなと感じたことはありましたか?
中村 僕の記憶にないだけかもしれないですけど、海外の選手は用語をあまり使わないかもしれないですね。用語を使っているのは解説者や新聞記者だけで、グラウンドではあまり聞かなかったように思います。
平畠 となると、テレビや新聞を見て、こういう言い方をするんだと知ることもあったと。
中村 そうですね。イタリア語で1試合2点取ることって、ドッピエッタっていうんだ、とか思っていたような気がします。そもそも、海外で使われている言葉をそのまま日本に持ってきているから、“用語”っぽく感じるのかもしれないですね。
お客さんの応援で試合は成り立っている
平畠 昨年はコロナの影響もあって、なかなか難しいシーズンだったのではないかと思います。
中村 そうですね。ただ、J1は降格がないからこそ見られたこと、進化できたこと、トライできたこともあったんじゃないかなと。今後の未来を見据えたときに、大事な1年だったかもしれないと思っています。
平畠 今シーズンは、緊急事態宣言中の開幕となるため、収容人数5000人かつ50%以下から始まる地域もあります。
中村 僕としては、昔から見てくださる人に“魅せたい”っていう欲が強くあって。それに、これはスポーツ全体に言えることかもしれないですけど、試合って応援込みで成り立っているものじゃないですか。
よく憲剛(中村憲剛)が客席を煽っていましたけど、押し込んでいるときや守り切るとき、お客さんの反応で意識をかき立てられる割合はやはり大きいと思います。
そういう当たり前だと思っていたことが、そうじゃなかったと知ることで、人としてだけじゃなく、プレーもいい方向に変わっていくことがあるんじゃないかなと。
平畠 お客さんと勝利の歌を歌える喜びも、いっそう増すのかもしれないですね。今季の活躍も楽しみにしています!