現役のプロサッカー選手が、誰も足を踏み入れてこなかったYouTubeというジャンル。そこにプレースタイルと同じく、果敢に一歩踏み出したのが那須大亮さん。現役中から動画投稿を始めるという、前代未聞の試みでサッカーファンを驚かせた。批判を覚悟してでも彼を駆り立てたものとは? その熱い胸の内を聞いていく。

現役サッカー選手の動画投稿には9割が否定的だった

――まずYouTubeを始めたきっかけを教えてください。

那須大亮さん(以下、那須):YouTubeを始めるきっかけになったのが、浦和レッズのサポーターの声援なんです。レッズ以外にもさまざまなクラブでプレーさせていただき、どこのクラブでも大声を出して選手を鼓舞してくれるサポーターの存在は、心の支えになっていました。

そんな中でも、浦和レッズのサポーターは常々「一緒に戦いましょう!」という声を掛けてくれたんです。そこから、僕にとってサポーターは「応援してくれる人」から「ともに戦う仲間」に変わりました。

プレーヤーとして18年グラウンドで戦ってきて、常に自分に寄り添ってくれたサポーターに恩返しできないか、と考えていたときに出会ったのがYouTubeでした。

影響力や拡散力がとてもあるので、これを使ってJリーグの発展に貢献すれば、サポーターたちへの恩返しにもなるし、お世話になった日本サッカー界に何かを還元できるんじゃないかと思い、動画投稿を始めました。

――なるほど。現役時代から動画投稿を始めたワケは?

那須:僕が一番大切に思っていたことが「自分が何をしたいか」「何を伝えたいか」を明確にすること。僕の中でそれは「サッカー界に恩返し」をすることでした。

そう考えたときに、現役Jリーガーとして動画投稿をしている人がまだいなかった。引退してからだと時間がもう少しかかるし、何より「現役でやっているからこそ伝えられること」があるんじゃないかと思いました。あとは、思い立ったときに行動しないのは自分らしくないなと思って、チャレンジしてみました。

――たしかに那須さんの動画は、現役選手同士だからこその素顔なども見れて、とても新鮮でした。ただ、現役時代から始めることに周りの反応はどうだったのですか?

那須:もう厳しい意見しかなかったです(苦笑)。賛否の「否」が9割でした。でも、少ないけど賛同してくれる人はいたし、何より所属していたヴィッセル神戸が許可してくれたから始められました。

ただ、最初の方に投稿した動画のコメント欄は「こんなことしていないで練習しろ」「試合に出られていないのに、こんなことしてていいの?」など、厳しいご意見をたくさんいただきました。面と向かって鼻で笑われたこともありましたね。

――チームや那須さんを想ってかもしれせんが、厳しい意見ですね……。那須さんは、どのように受け止められていたんですか?

那須:僕の中で、そういったこと(批判が飛び交うこと)は想定していたんです。この逆風は必ず通る道、通らないといけない道だろうな、と。現役選手が試合に出られていないのに、動画ばっかり撮っていたら怒る気持ちもわかります。

ただ、僕が目標にしている「Jリーグの発展に貢献する」には、現役だからこそ撮れる動画が必要不可欠でしたし、そこに価値があると思っていました。真剣に着実にやっていけば、動画の意味をわかってくれる人が増えて、逆風が追い風に変わるというブレない自信もありました。