世界各国の料理がしのぎを削る
最初の緊急事態宣言が出されたのが2020年の春。あれから1年が経ち、配達員を取り巻く環境は大きく変わりました。当初はファストフードや牛丼の大手チェーン店や、街の個人店が大半を占めていた印象です。ですが最近は、高層ビルの最上階にあるレストランのステーキを運んだり、銀座の高級寿司を運んだりすることも。
お手頃の価格帯から高級料理まで……いまや東京のウーバーイーツ界は百花繚乱、いえ戦国時代の様相を呈しているといっても過言ではありません。世界各国の料理も出前で頼める時代となっているのです。といっても、中華・インド・タイ・イタリアのような、誰もがイメージできる国の店ではありません。
今回は、ちょっとマイナーな国の料理を配達した話をしたいと思います。
以前、ブラジル料理をよく配達しているという仕事仲間から聞いたのが「フェイジョアーダ」というブラジルの国民食の話です。金串に肉を刺した「シュラスコ」は、私も何度か食べたことがありますが「フェイジョアーダ」は初耳です。なんでも、日本人にみそ汁が欠かせないように、ブラジル人もこの料理を愛するよう。現地では毎週水曜日と日曜日の週2回食べる習慣があるそうです。
話を聞いた配達員も「前から水曜日と日曜日は特に注文が多かったから、ちょっとスマホで調べたら、そういう習慣があるのを知った。だから今は、水曜日と日曜日はこの店の近辺で注文を待っているんだ。マクドナルドほど配達依頼は来ないけど、最近は『ウーバー地蔵』という言葉が一般の人にも知れ渡って、マクドナルドのあたりで待っていると変な目で見られるからね」とのこと。我々配達員はたくましくないといけません。
週に2回も食べる料理ならさぞおいしいのだろうと、先日このお店へ行き、客として「フェイアジョーダ」をいただいてみることに。見た目は餅のないお汁粉のようでしたが甘くなく、米と一緒に食べるしょっぱい系の黒い豆のスープ。
その味は……うまくもなく、まずくもなく、不思議な感じでした。使われているインゲンマメは安く手に入るのでしょうから、今も貧富の差が激しいブラジルでは、貴重なたんぱく源なのでしょう。まぁ、私たちが金欠時に納豆や豆腐で乗り切るのとも似ているのかもしれません。